公開日:2024.06.21 
更新日:2024.08.08

不妊治療でパートナーが積極的でない場合の原因と対処法

監修者 | 黒田 優佳子
男性不妊治療の専門である黒田IMRの院長

精子学の研究者であり医師である視点から、
不妊治療における誤解やリスクを解説

不妊治療でパートナーが積極的でない場合の原因と対処法

不妊治療に対するパートナーの消極的な態度には、いくつかの原因が考えられます。

今回は積極的でない原因と、その対処法についてまとめました。

日本では伝統的に、不妊治療は女性の責任と考えられがちです。そのため、男性パートナーは自分の役割を軽視してしまう傾向にあります。

▼対処法:性別役割観の見直し

不妊治療は夫婦で取り組むべき課題であり、男女の役割は平等であることを理解し合うことが重要です。男性パートナーにも積極的な参加を促し、不妊治療におけるお互いの役割を共有することで、夫婦の絆を深めることができます。

 

ストレスへの対処法の違い

不妊治療は夫婦双方にストレスを与えますが、ストレスへの対処法が異なる場合があります。男性は問題解決に集中しがちで、感情面での対処が苦手な傾向にあります。一方、女性はストレスを感情的に表現することが多いため、お互いの対処法の違いから、コミュニケーションが取れなくなる可能性があります。

 

▼対処法:コミュニケーションの改善

夫婦で定期的に話し合い、不妊治療に対するお互いの気持ちを共有することが不可欠です。またストレスへの対処法の違いを理解し合い、お互いを尊重しながら、協力して乗り越えていくことが大切です。カウンセリングの活用も有効な方法の1つです。

 

検査への抵抗感

男性にとって、精子検査などの検査は恥ずかしく、抵抗感を感じる場合があります。また結果が良くなかった場合への不安感もあり、検査の必要性を理解していても、実際に検査を受けるのを避けてしまうことがあります。

 

▼対処法:検査への理解を深める

男性の不妊検査は主に精液検査になりますが、検査の目的や必要性を丁寧に説明し、男性パートナーの意識を上げて不安を和らげることが重要です。検査の内容や流れを共に確認し、お互いに理解を深めることで、男性の検査への抵抗感を減らすことができます。

治療への関心の差

不妊治療に対する関心や意欲の差が夫婦間にある場合、お互いの理解が得られず、トラブルの原因となります。一方が積極的に取り組む一方で、他方が消極的だと、お互いの立場が対立してしまう可能性があります。

 

対処法:治療への意欲を共有する

夫婦で治療への意欲や目標を共有し、お互いに理解し合うことが大切です。治療に対する考え方に違いがある場合には、その点に関してしっかり話し合いをしましょう。お互いの立場を尊重しながら、協力して取り組むことが重要です。

 

経済的負担への不安

不妊治療には多額の費用がかかるため、経済的な負担に対する不安が男性パートナーの消極的な態度につながる場合があります。

 

▼対処法:経済的負担への対策

不妊治療の費用について夫婦で話し合い、お互いの貨幣価値を共有することが重要です。2022年4月より不妊治療が保険化されましたので、保険適応の治療範囲や、治療費の支援制度などを確認することにより、経済的な不安を和らげることができます。

 

一方で注意点としては、保険適応外(自費診療)の不妊治療の内容との違いについて、夫婦で十分理解した上で、適正かつ有効な不妊治療を選択されることをお勧めします。

まとめ

不妊治療は夫婦で取り組む課題です。夫婦にとって大きな心理的・身体的・経済的負担となる不妊治療だからこそ、お互いの気持ちの共有、理解と協力が不可欠です。パートナーが消極的な場合は、性別役割観の見直し、コミュニケーションの改善、検査への理解深化、治療への意欲共有、経済的負担への対策など、さまざまな対処法を試みることが重要です。夫婦で寄り添い、支え合いながら、不妊治療に取り組むことで、より良い結果につなげることができます。

 

また不妊治療は長期にわたることが多いので、定期的な休息や趣味の共有をしてストレスを和らげる工夫をすることで、夫婦関係を良好に保つことができます。治療を通して夫婦の絆を深めるためにも、お互いを思いやり、支え合うことが何より大切になります。

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監修者│黒田 優佳子

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監修者│黒田 優佳子

黒田インターナショナル メディカル リプロダクション院長。不妊治療で生まれてくる子ども達の健常性向上を目指して「高品質な精子の精製法および精製精子の機能評価法の標準化」と共に「次世代の不妊治療法」を提唱し、日々の診療と講演活動に力を注いでいる。

出版
不妊治療の真実 世界が認める最新臨床精子学
誤解だらけの不妊治療

主な監修コラム
不妊治療について
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