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- 男性不妊の治療はいつから始める?精子の老化や妊孕性についての解説【専門医監修】
更新日:2023.09.19
男性不妊の治療はいつから始める?精子の老化や妊孕性についての解説【専門医監修】
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男性不妊だったら?という不安 男性はいつから受診すべきか?
世間一般では なかなか赤ちゃんが授からず「不妊」となりますと「女性側に何かしらの問題がある」と思われがちです。しかし実際には、不妊になる原因の約半数は『精子に異常がある男性不妊』ですので、男性側も なるべく早い時点で専門施設を受診して精子の精密検査を受けてください。遅くとも妊活を開始して半年を経過しても成果が得られない場合には、受診された方が効率的です。
精子異常の種類と程度には個人差がありますが、生殖補助医療による治療対象になる不妊男性の大半の方には『隠れ精子異常』という、通常の位相差顕微鏡による精液検査では検知されずに見逃されてしまう、精子の中に隠れ潜んだ異常が認められます。この隠れ精子異常の有無により妊娠率が大きく変わりますので、なるべく早い時点で『精子精密検査』を試みることが上手な妊活法になります。
精密検査の結果、「精子に問題がある」ことが明らかになった際には、当然のこと気持ちが落ち込みますが、このような時こそ「なぜ自身の精子が・・・」と後ろ向きにではなく、「早い時点で判明してよかった!」「自身の精子のタイプに合った治療はあるのかな?」「どのような医療介入が最適なのか?」と前向きな気持ちに切り替えて一歩を踏み出していただきたいです。
男性の精子検査はいつから始めるべきか?
現状の男性不妊の診断は、WHO基準値による精液検査の結果に基づいています。その診断基準は通常の位相差顕微鏡で精液を観察し、見た目だけで「精子形態」「精子数」「運動率」等を算出するというもので、決して診断精度は高くありません。具体的にいえば、「精子の形が悪い」「精子数が少ない」「運動率が低い」など、一つでも基準値を満たさないと「精子異常」と判定されて「造精機能障害」つまり「男性不妊」と診断されます。
しかし精子異常の最も怖い点は、「精子の形や動きが悪い」とか「精子が少ない」というような、見た目で簡単に判定することができない(見た目ではわからない)異常をもった精子がたくさん含まれている点です。言い換えれば、見た目が正常な運動良好な精子の中にも、隠れた多様な異常(精子内部の構造や機能の異常)をもっている精子が多いということです。とくに、男性不妊の方の精子には その傾向が強く見られます。
前述しているように、この『見えないところに存在する精子異常』を『隠れ精子異常』と言っていますが、分子生物学的な手法で特別な顕微鏡を用いて観察することにより初めて明らかになる異常ですので、上述した通常の位相差顕微鏡では検知できません。そのため、隠れ精子異常を正確に見極めることが難しく、隠れ精子異常が見逃されたまま間違った治療に進められる危険性があります。
また大半の隠れ精子異常の背景には、遺伝子の突然変異(遺伝子異常)が関与しています。言い換えれば、先天的に精子形成に関わる遺伝子に異常があることが原因で隠れ精子異常が起きてくるということです。遺伝子異常を克服できる技術、治療法はありませんので、治療も難航します。
ここに男性不妊治療の難しさがあります。ですから、妊活を開始するにあたり最も重要な点は、なるべく早い時点で(できれば治療を開始する前に)『隠れ精子異常の有無』を正確に見極めることができる『精子精密検査』を受けておくことが必要不可欠です。その結果から、適正な男性不妊治療の方向性が見えてきますので最も効率的です。
精密検査の結果、「隠れ精子異常がある」ことが明らかになった際には、「なぜ?」という辛い思いになりますが、その気持ちを乗り越えて「自身の精子のタイプに最適な治療法は何だろう?」と前向きに捉えていただきたいです。
精子の老化に関する調査
『精子の老化』に関しては、真偽のはっきりとしない不確実な情報が世間に溢れていますが、近年、不妊の約半数を男性側に原因がある男性不妊が占め、しかも男性不妊の大半が精子に何かしらの問題がある精子異常であるという事実も知られるようになり、「精子の老化」も着目されてきました。
一般的に言われているように、卵子の劣化は加齢に直結しますので、女性の年齢が上がると卵子の数は減り、質も下がるので妊娠しづらくなります。つまり、加齢が卵子妊孕性の低下に直結します。
同様に、精子に関しても加齢に伴って老化が進み、質が下がり、数も減少すると語られている傾向にあります。しかし一方では、精子の場合は加齢による老化への影響は低いとする報告もあり、統一された見解はなく、日本生殖医学会においては「現時点では結論は出ていない」と公表しています。
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加齢は精子妊孕性の低下に直結しない!
精子は元になる細胞(始原生殖細胞)から その都度 造られますので、産生量は加齢により多少減少しますが、上述したように精子異常の背景には遺伝子異常(先天異常)が関与している場合が多いため、卵子と違って精子の場合は加齢の影響は低いというのが真実です。つまり、加齢が精子妊孕性の低下に直結しません。
詳しく解説しますと、精子は精巣で「粗雑に量産」されますが、その過程には「多くの」遺伝子が「複雑に」関与しています。その「煩雑な」形成環境において「一定の確率」で精子形成に関わる遺伝子に突発的に変異(遺伝子の突然変異)が起きてきます。この遺伝子異常を『新生突然変異※』と言いますが、その影響は精子の中に隠れた異常(隠れ精子異常)という形で発現してきます。
※新生突然変異とは?
精巣で精子が造られる過程で起こり、2万個以上の遺伝子に一定の確率で突然変異を引き起こします。遺伝子の突然変異は、精子1匹単位で異常発現する箇所が異なり、複雑化します。このことが、男性不妊治療を難航させます。
まとめ
不妊治療において、いくら妻の治療がうまくいっても、夫の精子に問題があれば妊娠率は上がりません。隠れ精子異常を見逃したまま間違った治療に進まないためにも、なるべく早い時点で精子精密検査を行けていただくことをおすすめします。
黒田IMRでは隠れ精子異常を検出できる、分子生物学的な高度な技術による精子精密検査を実施し、科学的根拠に基づいた精子の詳細情報をお届けしています。
詳細は黒田メソッドのページの「高精度な精子機能検査(精子機能の精密検査)」の項をご参照ください。
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監修者│黒田 優佳子
黒田インターナショナル メディカル リプロダクション院長。不妊治療で生まれてくる子ども達の健常性向上を目指して「高品質な精子の精製法および精製精子の機能評価法の標準化」と共に「次世代の不妊治療法」を提唱し、日々の診療と講演活動に力を注いでいる。