監修者
黒田院長の自己紹介

プロフィール

黒田優佳子 東京都生まれAB型
職業:黒田インターナショナルメディカルリプロダクション 院長
趣味:スポーツ(水泳、テニス) 音楽鑑賞
座右の銘:日々精進

臨床家、医師として
『精子学』第一人者の黒田優佳子先生は どんな人?

なぜ、医師に?

小学校入学後は水泳やスキー、テニスなど活発に運動する機会に恵まれ、とても健康な体になりましたが、それまでは体が弱くよく母に連れられて小児科を受診しました。当時の私は、先生に診ていただくと元気になるので「先生が魔法使い」のように思い、「医師という仕事」に強い憧れを抱き、10歳の頃には「医師になること」が将来の夢となりました。

なぜ、精子学を専攻したの?

医学生の時「精子と卵子が受精する仕組み」に関する講義があり、生命誕生の神秘性に感動しました。その時の熱い想いが「命を誕生させる生殖医療」を専門にできる産婦人科医師になる決断に繋がりました。
昔から「不妊は女性側の問題」と考えられてきましたので「卵子の研究」ばかりが盛んに行われ、「精子の研究」は全くと言っていいほど着目されていませんでした。当時の私は、単純に「赤ちゃんの遺伝情報DNAの半分は精子由来なのに・・・」と不思議に思い、誰も興味を持たないのならば私自身が「精子の研究しよう!」という決意に至りました。

なぜ、大学院に進学したの?

医学部を卒業した1987年当時の産婦人科医師の業務は早朝から深夜に及び、一日中 院内にいるような激務の時代でした(今では問題になるでしょうが)。手術件数も多く、臨床家(医師)の経験値を積むには大変充実していましたが、一方で研究する時間を確保することは困難でした。そのような環境の中で大変に出遅れている「ヒト精子の基礎研究:精子学」に邁進して、将来的には「男性不妊の患者様を助けたい!」という強い思いが込み上げてきました。その熱い想いが大学院進学への決意に繋がり、再び学生になって猛勉強することになりました。

大学院時代の苦悩と喜び

当時は「精子は1匹いて元気に泳いでいれば問題なし!」「不妊は女性に原因がある」という固定概念が今より強く定着していました。その背景が精子の研究を遅らせた訳ですが、正直なところ「精子学」を指導できる専門家が殆どいないという時代でしたので、大学院入学後の最初の苦悩は「研究の指導者」を探すことでした。必死に作成した実験計画書を持参して数々の研究室の門を叩いたところ、幸運にも東京大学農学部、東京理科大学薬学部ご卒業の研究者方とのご縁をいただくことができました。しかし、やっと私の「ライフワークとなった精子学」の道がスタートした時は、すでに大学院入学後数ヶ月が過ぎていましたので、焦る気持ちを抑えて研究に没頭できるように自身を奮い立たせたのを覚えています。その後は少人数ではあるものの「精子研究チーム」が結成され、充実した研究生活になりました。博士号取得の論文になった「ヒト先体反応精子の選別法および評価法を確立できた」ことは、「研究指導者探し」から始まった苦難のスタートでしたので、この上ない喜びでした。大学院卒業後には東京大学医科学研究所で研究を邁進する機会をいただき、一貫して『安心して不妊治療に用いることができる高品質精子の選別法と評価法の技術開発』を進めてきました。
そのころ1990年代は慶應医学部出身の女性医師が極めて少ない時代(一学年の5%程度)で昔ながらの男性社会が定着していましたが、当時の慶應産婦人科教授からは「精子研究の重要性と発展性」をご評価いただき、女性初の医長というポジションにご任命いただきました。

大学初の女性医長から黒田IMR設立まで

医長就任後、私は慶大医・大学院や東大医科研で研究開発した精子側の最新技術(黒田メソッド)を出身校に導入し、慶應ならではの「安全な男性不妊治療への取り組み」に力を注ぎたいというビジョンを持ちました。しかし当時の男性社会が根強く残る中、また長い歴史と伝統をもつ校風もあり、プロジェクトを実行に移すことは不可能である現実に直面しました。そのような環境で教室初の女性医長という重責を感じながら日々悩み苦しみましたが、男性不妊に苦しむ患者様の将来を見据えて「私自身の基礎研究に基づいた最先端の知識と技術を駆使した不妊治療を実現する場所を新たに作ろう!」という考えに及びました。そして2000年春 大学を去り、黒田IMRの設立に至りました。独立する決意を固めた時はそれまでの人生の中で最も強い覚悟をもった瞬間でした。その時の強い気持ちがあるからこそ今日に至る30年以上にわたり、精子研究チームと共に基礎研究を継続することができ、その成果を日々の男性不妊で苦しむ患者様に橋渡しできているのです。

黒田メソッドの意義は?

近年 生殖医療の普及は目覚ましく、少子化問題を抱える日本の将来を考える上で不妊治療は不可欠な医療になりました。これまで「不妊は女性側の問題」と考えられてきましたが、実際のところ不妊原因の約半数は男性側にあり、その男性不妊の大半が『精子に異常』があるケースです。それにもかかわらず『精子に関しては真偽のはっきりとしない不確実な情報』が世間に溢れている状況です。昔から「頭部が楕円形の精子で元気に泳いでいれば問題なし(運動精子=良好精子)」という性善説が信じ込まれています。しかし実際はそうではなく、見た目が正常な運動良好な精子の中にも、見えない部分(精子の中)に遺伝情報DNAの損傷を始めとする機能異常を持っている『隠れ異常精子』も多々含まれています。つまり、運動精子だからといって隠れ異常がないとは言えないということです。また隠れ異常の背景には遺伝子異常(先天異常)が関与していますので、隠れ異常が見逃された運動精子が生殖医療に用いられることは、治療の安全性と有効性の観点から あってはならない訳です。そにもかかわらず現在の不妊治療では、『精子の品質管理の重要性と必要性』が見過ごされている点に大きな問題があります。
アメリカ政府によるアメリカ疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)は「顕微授精と自閉症スペクトラム障害発症との間に因果関係がないとは言い切れない」という見解を出し、リスクを指摘しています。命を誕生させる生殖医療で最も怖い点は、顕微授精という技術により本来受精しては困る異常精子であっても人工的に受精が可能になり、生まれてくる子どもに悪影響を及ぼす可能性がある点です。つまり精子側から『健康な命』を誕生させるには、『品質管理』できた高品質精子が用いられる(隠れ異常がないことを確認できた精子が選別される)ことが不可欠ということです。そこに着眼した黒田が、研究チームと共に一貫して『高品質精子の高度な選別法』と『高精度な評価法』の技術開発に邁進してきたことに意義があるのです。

現在の仕事への使命感

一つ目の使命は『生殖補助医療の安全性と有効性の向上に寄与できる精子側の開発技術を患者様に提供し続ける日々の診療努力』にあります。
二つ目の使命は『精子側の特殊技術を医療従事者に伝授する教育努力』です。

上述したCDCの見解も踏まえ、生殖補助医療で生まれてくる子ども達の健常性を向上させることが急務です。医療の根源として安全確保は当たり前のことですが、命を誕生させる不妊治療においては「安全が何よりも優先」されます。不妊治療のゴールは妊娠ではありません。生まれた子ども達が心身ともに健康に平均寿命まで生きられることです。そこで精子側から取り組める安全対策として、『隠れ異常がないことを確認できた高品質精子が選別される』ことが大前提であり、不可欠であるということです。

また生殖補助医療の治療対象となる不妊男性の精子には、DNA損傷を始めとする多様な隠れ異常が認められるケースが多く、その背景には遺伝子異常が関与していますので男性不妊治療は難航します。しかし隠れ精子異常は一般的な精液検査では検知できずに見逃されてしまいます。その結果、間違った治療が選択され、繰り返されることにより反復不成功に終わるという辛すぎる現実に陥る可能性も多々あります。治療成果を上げるためにも、治療を始める前に精子異常の種類と程度を正確に把握した上で治療に取り組むことが必須です。

つまり、「生殖補助医療の安全性と有効性」「治療の適正化と効率化」のためにも、研究チームで開発した『隠れ精子異常を高精度に見極める検査法』、ならびに、『治療に安心して用いることができる高品質精子を選別する技術』が不可欠です。これらの点を周知することが急務であると考え、日々の診療以外にも積極的に講演活動を行っていますが同時に、医療従事者に技術伝授する教育義務もあるという使命感をもって日々精進しております。

皆さまが正しい知識を持ち、最適で安全な治療を選択できるように

妊娠は夫と妻の共同作業の結果ですので、どんなに妻側の治療がうまくいっても、夫側(精子)に問題があるままでは妊娠率は上がりません。また精子側から出生児にリスクを生む可能性もあります。不妊治療において『精子の問題は最も深刻』です。 当サイトでは、皆さまが不妊治療や精子、卵子などに関する「正しい知識」を身に付けて「最適で安全な治療を選択」できるために、様々なコラムを掲載しております。すべてにおいて黒田が監修をしている情報ですから、不確実な情報は掲載されていません。コラム以外にもYouTube等で「正しい生殖医療の情報」をご覧いただけるようにしておりますので、是非お役立てください。

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