男性不妊治療の新たな救世主!新しい体外受精「人工卵管法」について専門医が徹底解説!

黒田優佳子 医師
この記事の執筆者 医師・医学博士 黒田 優佳子
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慶應義塾大学医学部卒業後、同大学大学院にて医学博士号を取得。
その後、東京大学医科学研究所 生殖医療研究チームの研究員として、男性不妊に関する基礎・臨床研究に従事。
臨床精子学の第一人者としての専門性を活かし、男性不妊に特化したクリニック「黒田IMR(International Medical Reproduction)」を開院。
診察から精子検査・選別処理、技術提供に至るまで、すべてを一人の医師として担う体制を確立。専門性の高い診療を少数精鋭で提供しつつ、啓発・講演活動にも取り組んでいる。

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新しい体外受精「人工卵管法」について
目次

男性不妊治療の現状と「人工卵管法」誕生の背景

不妊に悩むご夫婦は年々増加しております。約4組に1組が不妊の検査や治療の経験があり、2022年には出生児の約10人に1人が生殖補助医療と言われる体外受精や顕微授精により生まれております。

一昔前は 不妊は女性の問題という認識でしたが、今では男性側に不妊原因がある「男性不妊」が不妊の約半数を占め、男性不妊が意外と多いこと、しかもその男性不妊の大半が精子に何らかの問題がある「精子異常」に由来することが知られるようになりました。

それでは、一般的にどのように精子の異常を調べているのでしょうか? 

精子異常、男性不妊となると「即 顕微授精」ここに「落とし穴!」

長年にわたり不妊は女性の問題という認識であったこともあり、これまでの生殖医学の研究は卵子が主流でした。精子への関心は極めて低く、研究は出遅れましたが、そのような背景の中でもウシ精子の研究だけは盛んに行われてきました。なぜならば、種ウシでは「運動精子=良好精子」という性善説が成立しているため、研究材料として品質にバラツキがなく、取り扱い易いという利便性があったからです。

一方でヒトの精子は入手し難いこともあり、ヒト精子の研究は極めて出遅れましたが、種ウシと同様のイメージで語られるようになり、科学的な根拠が乏しいままヒトの精子においても性善説の考え方が定着した背景があります。そのため、治療現場では「精子の数が十分あり、運動精子ならば良好精子」という認識で運動精子が治療に用いられおり、また精子の最も特徴的な機能である「運動」に着眼して検査しています。

多くの施設では、一般精液検査と言われる世界保健機構WHO診断基準に従って普通の顕微鏡(位相差顕微鏡)を用いて、主に精液中の精子濃度(1ミリリットル中の精子数)、運動率(運動している精子の割合)、大まかな頭部形態等を観察する方法が実施されています。

本法は技術習得の必要もなく、高価な顕微鏡等の準備も必要ありませんので、何方でも、どの施設でも直ぐに対応できます。また観察の判定方法も極めて簡単です。単に見た目の判断でWHO基準を満たしていれば精子妊孕性(妊娠させられる精子力)があると判定され、男性不妊は否定されます。一方で、一つでも基準に達していなければ即 男性不妊と診断し、精子の状態がどんなに悪くても「1匹でもいれば妊娠できます」と説明され、大半が顕微授精になります。これが男性不妊治療の現状です。

精子の見た目とDNA損傷

ここで結論から申し上げますと、精子研究の進歩に伴って、ヒトにおいては運動精子の中にも普通の顕微鏡で検知できない、DNA損傷等の精子の質的異常が隠れ潜んでいること(これを『隠れ精子異常』と言う)、つまり性善説が成立しないことが判明しました。つまり、ヒトでは泳いでいることが精子の正常性を保証できない、また運動精子を用いた治療の安全性を保証できないということです。

健常な命の誕生に向けて、DNA損傷等の隠れ異常を持った精子が受精に関わることは許されません。しかし、普通の顕微鏡で検知できずに見逃された隠れ異常精子が顕微授精に用いられた場合、人工的な授精が可能になり、妊娠、出産に至るケースが出てきます。この場合には、生まれてくる子供の健康に何らかの異常が発症するリスクが生じます(後述)。

男性不妊の救世主として認識されてきた「顕微授精が精子の問題を解決できていない!」

1980年代後半、顕微授精は、男性不妊に対する最終手段として登場しました。その後、授精に必要な精子がたった1匹でいいこと、また人工的に授精させられること等の顕微授精の利便性が強調され、「1匹いれば・・・」と語り続けられ、顕微鏡で見て精子の状態が良い方から悪い方までフルレンジで実施されるように適応範囲が広がり、急速に普及しました。現在では「顕微授精さえすればいつかは妊娠できる」「顕微授精が精子の問題を解決した」というイメージが定着し、男性不妊の救世主として認識されています。

しかし実際の治療現場では、顕微授精を何回繰り返しても妊娠しない場合、それ以上の治療法がないことから顕微授精を繰り返すしかなく、結果として反復不成功のご夫婦が山積みになっています。つまり、顕微授精が男性不妊、精子の問題を解決できていないという矛盾が生じています。辛すぎる現実ですが、このようなご夫婦は治療を反復しているうちに妻の年齢も高齢化し、加齢による卵子の老化も加わり二重苦になります。

そのような背景の中で、臨床精子学を専攻する視点から申し上げれば、受精、妊娠するためは、精子と卵子の双方に一定以上の実力が必要であり、「精子の状態がどんなに悪くても、顕微授精さえすれば妊娠できる」、また「無事に生まれたら、出生児の健常性が保証される」というのは大きな誤解ということです。解りやすく言えば、ヒト精子に関する科学的な根拠に基づいた情報不足(隠れ精子異常の認識・リスク管理が乏しいこと)が顕微授精に対する過大評価を生み、医療側と患者側の双方に多くの誤解を定着させ、結果として反復不成功のご夫婦が山積みになるという実態と出生児への健康リスクを招いたということです(後述)。

顕微授精の限界「顕微授精は万能ではない!」

ここでは「なぜ、男性不妊の救世主と認識されてきた顕微授精が精子の問題を解決できないのでしょうか」この矛盾点について精子学を専攻する産婦人科医師の視点から解説します。前述でお話ししましたが、ヒト精子では隠れ異常の存在があり、性善説が成立しない訳ですが、それでも運動精子が治療に用いられ続けています。ここに顕微授精反複不成功の原因、ならびに出生児の健康に悪影響を及ぼすリスクの根源があります。

ここで重要なことをお伝えします。DNA損傷をはじめとする隠れ精子異常(質的異常)は、新生突然変という遺伝子異常に起因します。つまり、生まれつきの問題(先天性)に由来します。また顕微授精の治療対象になる男性には、この隠れ精子異常率が高い傾向が認められます。それにもかかわらず、顕微授精は隠れ精子異常の背景にある遺伝子異常(質的異常)を克服できる技術ではなく、単に精子の数が少ない(量的不足)に対処する技術であるということです。

換言すれば、精子の質的異常を根本的に解決できない顕微授精の実施において、注入する精子の品質管理が不十分であったということです。隠れ精子異常に気づかないまま顕微授精を繰り返したところで成果になる可能性は極めて低いということです。ここに顕微授精反復不成功の実態、つまり男性不妊の救世主と認識されてきた顕微授精が精子の問題を克服できていない現実を創り上げた理由・原因があります。顕微授精は万能ではありません。

顕微授精の「最大のメリット」が「最大のデメリット」になり、「出生児への健康リスク」を生む

顕微授精の最大のメリットは、受精できない精子の授精を人工的に可能にする点にあります。しかし逆に、顕微授精には危険な精子でも人工的に授精させてしまい、治療の反復不成功や出生児への健康リスクを生みます。ここに顕微授精のリスクがある点を考慮しますと、これこそが最大のデメリットになります。安全な顕微授精を実施するためには、そのリスクヘッジが必要であり、それが卵子に刺す精子に隠れ異常がないこと、具体的に言えば、事前に隠れ異常を確認できて、積極的に隠れ異常精子を排除できること、つまり精子の品質を厳密に管理すること(精子の品質保証)が必要不可欠であるということです。精子品質管理が治療の安全保証の要になることを踏まえれば、1匹の精子を選別する顕微授精は大変に責任の重い医療行為になります。

不妊治療はリコールができません。だからこそ治療の安全が何よりも優先されなくてはなりません。そこで、私の究極の生殖補助医療の安全戦略の原点は、「顕微授精をしないで済むのならば、しないに越したことはない!」という考えに行き着き、この方針に基づいて開発した高度化した体外受精法が『人工卵管法』です(後述)。

黒田インターナショナルメディカルリプロダクションが考案した男性不妊治療の新しい救世主「人工卵管法」とは?

顕微授精のみならず、体外受精も含めた生殖補助医療で生まれてくる子どもの健常性を向上させるためには、出生児へ健康リスクに直結する「隠れ異常精子を積極的に事前排除」できる技術、逆に言えば「隠れ異常のない高品質な精子を選択的に分離」する技術があることが大前提になります。

幸いにも私たち研究チームが開発した精子側関連技術を駆使することにより、精子選別基準を厳しくしていく過程で得られる精子の数は減っていきますが、高い割合で高品質精子の選別できるようになりました。しかし、どんなに精子の分離精度を高くすることに成功しても、異常精子を100%排除することはできないのが細胞生物学の原理です(下図参照)。

だからこそ、黒田が目指す安全戦略では「できるだけ顕微授精をしない」方針を貫くために、選別し得た少数精鋭の高品質精子を効率よく自然に受精できる環境を考案しました。それが、体内で自然に受精する仕組みを想定した、卵管をイメージした細い流路を活かした極微小環境体外受精法『人工卵管法』です。

新しい体外受精「人工卵管法」のメカニズムと独自性

普通の体外受精と人工卵管法の比較

下図の左は、通常の「ふりかけ法」と言われる「体外受精」のイメージです。精子は広い空間を自由に動き回りますので、受精する空間内のロスが大きくなり、効率が悪くなります。

一方で下図の右が、培養皿の小さな「くぼみ」を「細い流路」で連結した「人工卵管法」による体外受精のイメージになります。選別された高品質精子(青色)の中から、卵子(赤色)のもとに泳いで辿り着くことができた更に選ばれた精子だけが、狭く制限された空間内で卵子と受精しますので大変効率的です。従来の体外受精の100分の1以下という、極めて少ない精子で受精が可能になる点に人工卵管法の最大のメリットがあります。

体外受精の新たな方法、人工卵管法の解説

人工卵管法には徹底した「精子選別」と「選別精子の評価」が不可欠

前述していますが、人工卵管法の実施に際しては、質の高い精子を選別できる高度な技術があること、また選別した精子の質が高いことを確認できる高精度な技術があることが大前提になります。正直なところ、高精度精子検査の結果と卵子の状態を踏まえて、その方の精子のタイプに最適な媒精条件を微調整する必要があり、ここには精子取り扱いの経験値が大きく影響してきます。

また中には、どんなに高度な技術で精子を選別しても、高品質精子を選別できない(高品質精子が存在しない)場合や、もともと造られている精子が少な過ぎて選別することすらできない場合もあり、全てに対応可能な訳ではありませんが(下図参照)、人工卵管法で期待できると判断できた場合には、重度な男性不妊治療の切り札になります。

精子の選別が出来なかった。

人工卵管法は、女性不妊治療の救世主にもなる!

人工卵管法と顕微授精の卵子への負担の違い

皆さんは驚かれることと思いますが、卵子(約100ミクロン)を野球のボールに例えますと、穿刺針(内径約7~8ミクロン)は鉛筆くらいの太さになり、実は顕微授精により卵子には意外と大きな穴が開きます。人工卵管法では刺す必要がありませんので、卵子への負担軽減にも繋がります。とくに40代女性の卵子細胞膜の柔軟性は低下していますので、刺さないで済む人工卵管法は有効な受精法になります。

顕微授精は卵子に意外と大きな穴が開く

顕微授精との決定的な違いは「出生児リスク」の回避

繰り返しになりますが、受精できない精子の人工的な授精を可能にする点に顕微授精のメリットがありますが、このことが、出生児の健康に悪影響を及ぼすDNAが損傷した隠れ異常をもった危険な精子でも人工的に授精させてしまうリスクになります。とくに顕微授精は、精子と卵子が奇跡的に出会って自然に受精し、遺伝情報を伝達していく過程をバイパス(回避)する技術ですので、受精プロセスの時系列にズレを起こします。人工的な授精後に精子DNA損傷が卵子側の修復酵素で完全に修復されれば問題ありませんが、現実的には不完全に終わることも多く、これが出生児への健康リスク(専門的に言えば、エピジェネティクスの臨界期に介入すること:詳細説明は省略)に繋がります。

生殖補助医療で生まれる子どもの健常性向上には、治療に用いる精子の品質管理は極めて重要になりますが、何よりも顕微授精による人工的な刺激による出生児リスクを回避できる点では人工卵管法は優れています。

参考:顕微授精の間違った認識【顕微授精のリスクについて】

人工卵管法は胚の質、着床率、妊娠率の向上にも好影響

事前に精子の検査や選別の技術精度を上げて、精子の質と量の確保ができてから人工卵管法を実施するという「黒田IMRの安全戦略」は、当院を受診された顕微授精をかなりの回数繰り返されて成果にならなかった(顕微授精反復不成功)ご夫婦の一部を妊娠、出産に導いてきました。出生児のその後の健康も見守っています。

このエビデンスは、少数精鋭の高品質精子を受精に供したことが顕微授精の回避、および卵子への負担軽減を可能にしたこと、まさに この精子選別精度が高いことが成果へと導いてくれたことを意味します。逆に言えば、精子選別精度が低いことが、顕微授精の足を引っ張り、また出生児への健康リスクを生み出していたということです。

不妊治療の結果は、次世代に継承されていくからこそ、真のゴールは妊娠ではありません。また妊娠して待望の子どもが生まれればいい訳でもありません。不妊治療で授かっか子どもが健常に生まれ、そしてその後の子どもの身体的発育および精神発達に障害なく、平均寿命まで健康に生きることができること、ここに本来の不妊治療の真のゴールがあります。

人工卵管法は、どのようなご夫婦にお勧めですか?

「精子の数が少ない」「運動率が低い」と男性不妊でお悩みの方

「顕微授精しかない!」と言われ、不安があるご夫婦の新たな選択肢になります。

顕微授精で「受精しない」「胚が育たない」でお悩みのご夫婦

卵子の質のみならず、精子の質の問題、さらには受精法がボトルネックになっているかもしれません。精子選別を徹底して、顕微授精を避ける受精法(針を刺さない人工卵管法)により卵子への負担軽減をすることで新しい道が開ける可能性があります。

妻の年齢が40歳を超えて残された時間が少ないご夫婦

人工卵管法では卵子に針を刺しませんので、卵子細胞膜を保護できます。とくに40代の卵子細胞膜の柔軟性は低下してきますので、卵子への負担を軽減させられる人工卵管法による受精法は効果的です。

顕微授精で生まれた子どもの発達に不安を抱えているご夫婦

どんなに精子の分離精度を高くできても、顕微授精を避けて人工的な授精をさせないことが安全確保の最優先になります。自然に受精することを期待する人工卵管法は、治療の安全性向上を図れますので安心です。

可能な限り「自然な形」での受精を望まれるご夫婦

倫理的な側面や顕微授精に抵抗があるご夫婦には、安全性が高い人工卵管法をお勧めできます。

保険診療の治療枠を終了されたご夫婦

 すでに保険診療枠を終了され、その後の治療が自費扱いになるご夫婦の切り札として、人工卵管法をお勧めします(人工卵管法は、保険点数の枠内に規定された受精法ではありませんので、自費対象の技術になります)。

黒田IMRにおける「人工卵管法」の治療ステップ

人工卵管法の5つのステップ

STEP1:事前の高精度精子検査による入念な精子解析

高精度精子検査を実施して隠れ精子異常の発現パターン(どんな異常なのか?という種類)と、ならびに、その異常率の重篤性(どのくらい悪いのか?という程度)を細かく解析し、その方の精子に関する科学的な根拠を把握します。

STEP2:高品質精子の確保のための精子のタイプに最適な技術の個別化立案(精子凍結を含む)

科学的な根拠を取得することにより、その方の精子のタイプにあった最適で安全な技術選択を決定することが可能になりますので、個別化した精子対策を設計することができます。

STEP3:高品質卵子の確保のための最適な排卵誘発の個別化立案 

高品質精子を確保するためのベストな技術の組み合わせプランを確立できたら、次に妻側の卵巣機能の状態を緻密に調べて、高品質卵子の確保を目指した、その方の卵巣のタイプにあった排卵誘発の条件を決定します。

STEP4:高品質胚の確保のための人工卵管法による受精環境の至適媒精濃度の算出および培養条件の個別化による徹底管理

最終的には高品質胚の移植を目指して、高品質精子の確保がきてから、精子機能を最大限に底上げするためにベストな媒精濃度を算出し、高品質卵子との受精の効率化を図ります。

STEP5:高品質胚の確保による成果向上を出生児リスクの予防

高品質精子と高品質卵子の確保、さらには人工卵管法への展開で受精の適正化を徹底することにより可能になる高品質胚を移植し、反復不成功と出生児の健康リスクを予防します。

精子学を専攻した男性不妊専門医からのメッセージ

安全な不妊治療の実現に向けて人工卵管法を普及させる使命

見た目では良好精子と判定される運動精子の中に隠れ異常精子が混在するということは、言い換えれば、穿刺しては危険な顕微授精に向いていない運動精子があるということ、とくにDNA損傷精子こそ出生児に何らかの影響を及ぼすリスク因子になるということです。

つまり、現状の顕微授精の実施において、注入する精子に隠れ異常がないことを裏付ける科学的な根拠が乏しいまま(品質管理が不十分なまま)普通の顕微鏡で1匹を選んでいること自体がリスクになるということです。

そのリスク予防対策として、事前に分子生物学的な手法で精子の品質を解析できる高精度精子検査を受けること、さらにDNA損傷精子を含む異常精子が積極的に事前排除されていることが必要不可欠になってきます。とはいえ、どんなに精子の分離精度を高くすることに成功しても、異常精子を100%排除することはできないのが細胞生物学の原理ですから、黒田が目指す安全戦略では「人工的な授精を可能にしてしまう顕微授精をしないで済むならば、しないに越したことはない!」という方針を貫いています。

これらの精子側の高精度な選別・評価の技術があることが前提条件にはなりますが、これらがクリアできれば、人工卵管法による媒精の低減化による受精効率を最大限に発揮させることが可能になり、結果として出生児へのリスクを予防できます。

不妊治療の結果は、次世代に継承されていくからこそ、真のゴールは妊娠でも出産でもありません。不妊治療で生まれたお子さんに成長過程において身体的発育および精神発達に障害なく、平均寿命まで健康に生きられること、ここに不妊治療の真のゴールがあります。

人工卵管法に関するよくある質問(FAQ)

これまで顕微授精で何度も失敗していますが、人工卵管法で妊娠の可能性はありますか?

はい、十分に可能性はあります。顕微授精で成果にならない原因として、精子の選別精度が低いこと、例えば、隠れ異常精子が卵子に注入されている可能性、また針を刺すことによる卵子への物理的ダメージ、さらには人工的な授精による培養環境の時系列のズレから生じる問題などが影響している等、様々なことが考えられます。

人工卵管法では針を刺しませんので、卵子の細胞膜が保護され、負担軽減になります。また高品質精子が高い割合で媒精され、さらには至適な培養条件が構築されることにより、精子自身の力で自然に受精を成功させますので、高品質胚を得ることができます。当院では、人工卵管法により顕微授精反復不成功のご夫婦の一部ですが、妊娠、出産に導いてまいりました。出生児の健康も守られています。

人工卵管法は、通常の体外受精(ふりかけ法)とは何が違うのですか?

ふりかけ法と言われる通常の体外受精は、培養液で満たされた広い空間において卵子と受精させるため、沢山の精子が必要になります。一方で人工卵管法は、女性の体内(卵管)で自然に受精する仕組みを体外で再現した「微小環境における体外受精法」ですので、従来の体外受精の100分の1以下という、極めて少ない精子で受精を可能にします。ここに人工卵管法の最大のメリットがあり、顕微授精リスクと出生児リスクの予防を可能にします。

人工卵管法による治療では、女性の体への負担や治療スケジュールは変わりますか? 

治療スケジュールや女性の体への負担(採卵や移植のプロセス)は、通常の体外受精や顕微授精と大きく変わりません。違いは、採卵後の受精プロセスにあります。患者様の負担を増やすことなく、より安全で自然な受精環境を提供できるのが人工卵管法の大きなメリットです。

まとめ

① 精子の状態が悪いと言われ、不安を感じている方
② 保険診療の治療枠を終了された方
③ 顕微授精を3回以上繰り返しても成果が出ず悩んでいる方
④ 妻が40歳を超えて残された時間が少ない方
⑤ 顕微授精で生まれた子どもの発達に不安を抱えている方は、一度立ち止まってください。

そして、高精度精子検査を受けていただき、「ここ迄の異常なら、人工卵管法による安全な治療が可能か」逆に「これ以上の重篤な異常なら、治療断念も考慮か」という、治療限界も視野に入れた見通し、ならびに出生児へのリスクを科学的根拠に基づいて正確に把握することをお勧めします。「精子の問題をいかに解決できるか否か」ここに不妊治療の鍵があります。このコラムが、貴方の次の一歩になりますことを願います。

Author information

黒田インターナショナル メディカル リプロダクション院長。不妊治療で生まれてくる子ども達の健常性向上を目指して「高品質な精子の精製法および精製精子の機能評価法の標準化」と共に「次世代の不妊治療法」を提唱し、日々の診療と講演活動に力を注いでいる。

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