いつから不妊? どのタイミングから不妊治療を考えたらいいのでしょうか?
夫婦が避妊せずに通常の性生活を続けて2年以上たっても妊娠に至らない状態を「不妊症」と言いますが、結論から申し上げますと・・・
妊活して半年位経過しても妊娠しない場合には、男性側も自身の精子に問題がないのか? 積極的に検査を受けられることをお勧めします。
また女性側も婦人科疾患の既往がある場合や、年齢的に35歳を過ぎたら(とくに40歳代になられたら)不妊検査を開始されることをお勧めします。
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不妊の原因の約半数は男性側にある
日本では昔、子どもを産めない女性は「石女 うまずめ」といわれ、離婚の原因とされ、実家に帰されていた時代が長く続きました。そのような背景もあってでしょうか?「卵子の老化」ばかりが注目され、未だに「なかなか赤ちゃんができない!不妊かもしれない?」となりますと、その不妊原因は女性側にある?と思われがちです。
実際のところ、女性の年齢が30歳後半~40歳代になりますと自然と妊娠し難くなりますし、また女性の社会進出に伴って晩婚化・晩産化が進んでいる状況にもあります。結果として、不妊治療を受ける女性たちが増加していることは事実ですが、実は、不妊になる原因の約半数は男性側の「精子に何かしらの問題」があるケースですので、男性不妊が意外と多いということです。
男性不妊の治療は難航する!なぜ?
これまで産婦人科領域においては、精力的に「卵子に関する研究」が行われてきたこともあり、良質の卵子を成長させる排卵誘発剤の開発が進みましたので、結果として有効性の高いホルモン療法が確立しました。そのため、卵子形成障害(排卵障害)を始めとする女性側の不妊治療(女性不妊)の成績は飛躍的に向上しました。
一方で、これまで泌尿器科領域においては「精子に関する研究」を行う医師は極めて少なく、また産婦人科領域においても、最近まで男性側(精子)についてほぼノータッチでした。その結果、精子の研究は大変出遅れてしまい、このヒト精子に関する知識・技術・経験の遅延が、男性側の不妊治療(男性不妊)の成績を低迷させています。
【必読ポイント!】多くの医療機関において、男性不妊の治療法として顕微授精が展開されていますが、ここで最も重要な点をお伝えします。顕微授精の治療対象になる男性不妊の方の精子異常は『隠れ精子異常』と言われる、先天性の遺伝子異常が原因で発症してくるタイプですが、顕微授精は あくまでも精子の「数が少ない」という「数的な不足」を補う技術であり、精子の「遺伝子異常」という「質的な異常」を克服できる技術ではないという点です。その点に関する認識が極めて乏しいことが、成果に繋がらない顕微授精の反復を招き、治療を難航させています。さらに最も怖い点は、隠れ異常精子を用いた顕微授精で妊娠した場合、生まれてくる子供に何かしらの異常が発症するリスクがあるという点です。
精子異常の背景には「遺伝子異常」が関与!早期発見して効率的に!
一般的に精子の問題は、卵子の老化と同様に加齢に伴い悪化するように報道されていますが、上述しましたように、これは正しい理解ではありません。精子は元になる細胞(始原生殖細胞)から その都度 造られますので、加齢に伴って産生量は多少減少しますが、精子異常の背景には遺伝子異常が関与している場合が多いため、卵子と違って加齢の影響は低いというのが真実です。
ですから不妊治療において、いくら妻の治療がうまくいっても、夫に問題があれば妊娠率は上がらないのです。男性不妊の治療は難航する場合が多いので、冒頭でも申し上げましたが、妊活して半年位経過しても妊娠しない場合には、夫側も専門施設を受診して、先ずは精子機能の精密検査だけでも受けることをお勧めします。詳しくは精子機能の精密検査の項目を参照してください。