そもそも不妊とは? いつから不妊?・・・と考えたらいいのでしょうか???
不妊症の定義として回答するのであれば、夫婦が避妊せずに通常の性生活を続けて2年以上たっても妊娠に至らない状態をいいます。しかし注意点としては、妊活して半年位経過しても妊娠しない場合には、男性側も自身の精子に問題がないのか? 積極的に検査を受けられることとお勧めします。
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不妊の約半数を占める男性不妊!その約90%が精子の問題!
世間一般では「赤ちゃんが なかなかできない!」となりますと、その原因は女性側にあると思われがちです。しかし実は、不妊の約半数を男性側に原因がある「男性不妊」が占めています。多くの男性は、一言で男性不妊と言っても「どこに問題があるの?」と思われることでしょう。その回答です。驚かれる方も少なくないでしょう。具体的に言えば、男性不妊の大半が、精子に何かしらの問題がある「精子異常」になります。別名「造精機能障害 ぞうせいきのうしょうがい」です。つまり「精子を上手く造ることができない」ことによる男性不妊が意外と多いということです。
精子異常? 精子のどこに異常があるの?
精子異常といいますと、一般的には「精子数の減少」や「運動率の低下」が指摘されますが、治療対象になる男性不妊の方の精子異常は、そのような見た目の異常のみならず、見えないところに隠れ潜んだ異常があるケースが殆どです。具体的に言いますと、精子の中に隠れた機能異常(これを隠れ精子異常という)になります。また隠れ精子異常を発症させる原因は、生まれながらの遺伝子の問題に直結しているケースが大半です。要するに先天性の問題ですので、治療が難航する傾向にあり、男性不妊・精子の問題は深刻化します(詳細は後述)。
【重要ポイント】世間一般では卵子の老化と同様に、加齢に伴って精子の質が低下するとか、飲酒、喫煙、極端なダイエット、食品添加物や遺伝子組み換え食品、化学物質による環境汚染や電磁場などが精子に悪い影響を及ぼすとか・・・語られていますが、そのような単純な話ではなく、実は、精子の問題には遺伝子異常が関与している場合が多いということです。逆に言えば、隠れ精子異常が原因の男性不妊の方に、生活習慣の改善や抗酸化剤サプリメント(コエンザイムQ10ほか)、漢方薬などで対応されているケースもありますが、残念ながら それらの効果を期待することはできないということです。
男性不妊!早期発見の鍵は「精子機能の精密検査」
上述していますが、体外受精や顕微授精といった生殖補助医療の治療対象になる精子異常は、一般的に言われているような「精子数が少ない」とか「運動率が低い」など、一般精液検査で用いる普通の顕微鏡(位相差顕微鏡)で見ただけでは見極めることができない、隠れ精子異常として発現する傾向が強いので、治療現場では見逃されがちです。
隠れ精子異常とは? どのような異常なのでしょうか?
具体的に言えば・・・
・精子DNAの損傷
・受精する機能の異常
・精子を包んでいる膜の異常
・精子を泳がせる代謝の異常
・頭部内に穴が開いている構造の異常・・・等々、
精子頭部の中に隠れた多様な「機能」や「構造」の異常だったりします。
隠れ精子異常がある男性不妊の早期発見を!
隠れ精子異常は『新生突然変異』という、父親から受け継いた遺伝子ではなく、突発的に発生した不運な遺伝子の突然変異に起因して発症します。解りやすく言えば、遺伝情報DNAのコピーミスが、隠れ異常として現れるということです。つまり、隠れ精子異常の殆どは、先天異常(先天性)ですので治療が難航し、深刻化します。
また「どのような」隠れ精子異常なのか?「どの程度の」隠れ精子異常なのか?という、種類と程度には個人差があり、一律同じ異常パターンで発現しません。つまり、遺伝子の突然変異(DNAコピーミス)が複雑に関与した結果が、隠れ精子異常として現れるということです。この点が男性不妊の治療を難しくしています。
【重要ポイント】結論から申し上げれば「精子の問題をいかに解決できるか!が不妊治療の鍵になる」ということです。だからこそ、隠れ精子異常の有無、つまり男性不妊の早期発見は重要です。そのためにも、なるべく早い時点で精子機能の精密検査を受けられることをお勧めします。
詳しくは、精子異常の項目 ならびに 精子機能の精密検査の項目を参照してください。
精子異常の原因を特定できるケースは少数派!
治療対象になる男性不妊(精子異常)の大半に遺伝子異常が関与していますので、原因を特定できるケースの方がむしろ少数になりますが、中には精子異常を発症させている原因が検査により明確になり、手術などで改善が期待されるケースもあります。以下に簡単に列挙しますので、ご参照ください。
1.後天性造精機能障害(後天性精子異常):後天性の問題で精子を上手く造れない!
内分泌疾患、精索静脈瘤、耳下腺炎(おたふくかぜ)による精巣炎、停留精巣(胎児のころは腹腔内にある精巣が生後数か月たっても陰嚢の中におりてこない病態)などが挙げられます。中には、治療(手術など)により精子の改善を期待できる場合もありますが、なかなか治療効果が認められないこともあります。
2.性機能障害:勃起や射精ができない!
性機能障害では、精子形成や精子輸送路には問題が認められませんが、勃起や射精といった性機能に問題があり通常の性交ができない場合です。具体的には、勃起障害や射精障害などが挙げられます。
勃起障害に関しては、バイアグラなどの薬剤で改善できるケースもあります。一方で、射精障害には心因性の関与もあり、勃起できても なかなか射精できないケースが多くみられます。どちらにしても医療機関に相談することを視野にいれてください。
3.精路通過障害:精子が通過する通路が詰まっている!
精路通過障害は、精子形成には問題が認められませんが、精子の通り道である精管の通過に問題がある場合です。具体的には、精路の炎症(精巣上体炎や精管炎など)、逆行性射精(内尿道口の閉鎖不全により射精時に精液が膀胱へ射精される場合)、閉塞性無精子症(精子形成は正常で精子機能には問題が認められませんが、射精する通路が閉塞されている場合)などが挙げられます。閉塞している場所を手術(顕微鏡下精路再建術)して精子が通過できるようにすることも原理的には可能ですが、現実問題としては難しいことが多いのも事実です。
コラム:男性不妊症の原因と検査について詳しく解説