高度な精子検査の重要性について|高品質精子の調べ方とは?

公開日:2019.02.21
更新日:2022.12.15
高度な精子検査の重要性について|高品質精子の調べ方とは?

精子学第一人者が教える精子異常の真実

不妊治療(生殖補助医療)において男性が受ける検査は、基本的に精子検査のみです。一般的には精子の数や運動率などが調べられ、精子数の減少や運動率の低下がみられますと、即、男性不妊という診断が下されます。

1匹でも精子がいれば、顕微授精で人の手を介して人工的に精子を卵子に穿刺注入し、授精させることが可能です。利便性が高いため、一般的な男性不妊治療ではほとんどのケースで即、顕微授精を実施します。

ところが実は、現在一般的に普及している精子検査の内容や、顕微授精の技術は、十分とは言えません。大半の場合、高度な検査を行えば避けられるようなリスクが伴っています。

一般的な精子検査は正確な診断が難しいことがある

一般的な精子検査では一滴の精液を顕微鏡で観察し、精子の数や運動率、精子形態といった外見的要素を分析します。しかし精液には精巣上体や前立腺、精嚢の分泌液が含まれており、採取する度に割合が変わるため、この方法で行った検査の結果は「正確」とは言い難いのです。精液を採取する毎に精液量や精子数が大きく変動し、結果に差が出る可能性があります。精子検査の精度を高めるには、高度な技術と知識による分析が必要です。

精子には受精できないものや授精させてはいけないものがある

また一般的な精子検査で「元気に泳いでいる」と確認できた精子であっても、何らかの理由で、精子機能に異常がある可能性があります。

精子機能異常の代表例は、DNAの損傷です。一般的なヒト細胞であれば、DNAが損傷してしまった場合、DNA修復能力によって回復させることが可能です。しかしヒト精子の場合は少し特殊で、「精子が形成される過程でその能力自体が失われてしまう」という性質があります。そのため「DNA損傷精子」というものが存在します。

DNA損傷をはじめとした隠れた機能異常を来している精子は、本来自然妊娠で受精できる能力を持ち合わせていないことが多いです。生殖補助医療においては、顕微授精などで人工的に授精させてはいけない精子と言えるでしょう。

「運動精子がある」だけで顕微授精を行うのは高リスク

上記のような、授精させてはいけない精子が存在するにもかかわらず、顕微授精に用いる1匹の精子を選ぶ際の一般的な基準は「頭部形態(頭部外周形状)が楕円で泳いでいることが確認できる精子」という、外見的なものです。この「運動精子=良好精子」とする考え方の基軸には、「隠れた異常を持つ精子はないだろう」という精子性善説があります。

しかし実際のところ、先述の通り運動精子には隠れた精子機能異常が混在していることがあり、精子性善説は成立しません。一般的な顕微授精の基準で選ぶと、卵子へ穿刺する精子を選ぶ際に、隠れた機能異常を持った精子を排除することができないのです。それどころか、リスクの高い精子を人為的に授精させてしまう可能性があります。つまり従来の精子評価指標は、安全性の高い顕微授精を行うには不十分(不適切)と言えます。

顕微授精そのものは、単に「精子の数が少ない」という精子の量的(精子数)不足を補う技術であり、DNA損傷をはじめとする多様な精子の質的(機能)異常はカバーできないということを理解しておきましょう。

安全性の高い顕微授精を行うには

「命を生み出す」生殖補助医療は、安全に実施することが大切です。顕微授精を行う際は、事前の精子検査で「精子が正常かどうか」「穿刺できるレベルかどうか」を、しっかりと見極める必要があります。その上で「どのような性質を持った運動精子を卵子に注入するか」をしっかりと管理して、正常な機能を持つ精子を選出することが重要、かつ、欠かせません。

正常な機能を有したDNAに傷のない「高品質精子(NA非損傷運動精子:DNA断片化陰性精子)」を卵子に穿刺する、安全性の高い顕微授精は、大きく分けて以下の2つのケースに絞られます。

・高品質精子の比率が高いケース
・高品質精子を選別できるケース

精子検査の結果、精液中に含まれる高品質精子の比率が高く、卵子に穿刺注入する精子を選別する必要がない場合は、顕微授精を行ってもある程度の安全性が確保できるでしょう。また精液中の正常精子比率が低い場合であっても、高品質精子(DNA断片化陰性精子)を選別できるのであれば、顕微授精の安全性は損なわれないはずです。

とはいえ機能異常のない高品質精子に関する知識や、それを選別・評価して機能異常精子を積極的に排除する高度な精子分離技術は、現時点の生殖補助医療ではあまり普及していません。一般的な精子検査では「高品質精子の比率が高いかどうか」は考慮されることがなく、顕微授精のための高品質精子の選別に至っては、実施可能な施設が極めて少ないのが実情です。

黒田IMRにおける高品質精子の調べ方

黒田IMRが確立した高品質精子の検査では、高精度な分子生物学的な技術によって以下の4点を解析または評価し、一般的な精子検査では観察できないレベルのさまざまな精子機能を精密に調べます。

1.精子の先体反応・精子の卵子接着機能の解析
2.精子のDNA構造正常性の解析
3.精子の中片部の評価
4.精子の頭部空胞の評価

これにより、多様な精子機能を精密に調べることが可能です。精子の質の良し悪しを正確に把握できるようになるため、現在では精子の妊孕性までもが、ある程度予測できるようになっています。

さいごに

不妊治療を続けていても全く成果が出ない場合は、一般的な精子検査では検出できない、隠れた精子機能異常が原因の可能性があります。やみくもにリスクの高い顕微授精を繰り返すのではなく、まずは高品質精子の有無を調べて「顕微授精しても大丈夫なレベルの精子であるか否か」を見極めることをおすすめします。ぜひ黒田IMRの精子機能の精密検査を試してみてください。

監修者│黒田 優佳子

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監修者│黒田 優佳子

黒田インターナショナル メディカル リプロダクション院長。不妊治療で生まれてくる子ども達の健常性向上を目指して「高品質な精子の精製法および精製精子の機能評価法の標準化」と共に「次世代の不妊治療法」を提唱し、日々の診療と講演活動に力を注いでいる。

出版
不妊治療の真実 世界が認める最新臨床精子学
誤解だらけの不妊治療

主な監修コラム
不妊治療について
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