高熱と精子の質の関係性とは?詳しく解説

黒田優佳子 医師
この記事の執筆者 医師・医学博士 黒田 優佳子

慶應義塾大学医学部卒業後、同大学大学院にて医学博士号を取得。
その後、東京大学医科学研究所 生殖医療研究チームの研究員として、男性不妊に関する基礎・臨床研究に従事。
臨床精子学の第一人者としての専門性を活かし、男性不妊に特化したクリニック「黒田IMR(International Medical Reproduction)」を開院。
診察から精子検査・選別処理、技術提供に至るまで、すべてを一人の医師として担う体制を確立。専門性の高い診療を少数精鋭で提供しつつ、啓発・講演活動にも取り組んでいる。

詳しい経歴・実績一覧はこちら

【妊活】高熱と精子の質の関係性

男性の生殖機能(精巣の機能)は、色々なストレスに敏感に反応して、その影響を受けます。世間一般では、幼少期に流行性耳下腺炎(おたふく風邪)に罹患して高熱を出すと、精子を造る精巣の機能(ぞうせいきのう「造精機能」と言う)が低下すると言われていますが、高熱は精子の質(精子機能)に大きな影響を与えます

この記事では、高熱が精子に与える影響、男性不妊におけるその意味、そして精子の質を保つための対策について詳しく解説します。

目次

高熱が精子に与える影響

1.精子数の減少

高熱を伴う病気、前述した流行性耳下腺炎(おたふく風邪)の他にも、コロナ・インフルエンザ・ノロウイルス感染症、睾丸炎などが原因で、精子数が大幅に減少することがあります。

数ヶ月という長い時間を要して回復する場合もありますが、不可逆的なこともあります。後者の場合は、妊活に向けて生殖補助医療による不妊治療が必要になる可能性が高くなりますので、注意が必要です。


2.精子の質の低下・精子機能異常

造精機能が正常に働くために、精巣は体温よりも低い温度に保たれています。つまり、精巣は高温には弱いので、高熱が数日間続くことにより、造精機能が障害されます。結果として、 造られる精子の質(精子機能)が著しく低下する危険性があります。

一般的には「精子の問題」となりますと、「精子の数が多い、少ない」、「精子が元気に泳いでいる、動きが悪い」、「精子の形が良好か、変形しているか」などが着目されていますが、健康な命を誕生させるという観点から言えば、「精子数」「運動率」「形態」より、「精子の機能が良好か、異常か」という点が最も重要になります

現実的な問題として、精子機能異常が認められた場合には、妊活に際して不妊治療による医療介入が必要になることも多く、また治療も難航する傾向にありますので、精子機能異常は深刻な問題になります

男性不妊と精子の質、精子機能との関係

不妊治療_男性不妊と精子の質と精子機能の関係

男性不妊の原因の大半が精子機能異常

不妊になる原因の約半数は、男性側の「精子に問題」がある「男性不妊」です。上述していますが、「精子の問題」となりますと「精子数の減少」「運動率の低下」「形態異常」などが表面化されますが、不妊治療の対象になる男性不妊の中で「治療を難航させる厄介者」になるのは、むしろ「精子の機能異常」です

精子機能異常の背景には 遺伝子の問題(先天性)が関与しているケースが多く、このことが男性不妊治療を難航させますが、中には生活環境の改善(後天性)により改善を期待できる場合もあります。偏食を避けてバランスの取れた食事や適度な運動、十分な睡眠、禁煙などを日頃から心がけることも大切です。

また冒頭でも解説していますが、高熱の精子への影響が不可逆的になることも少なくありませんので、サウナなどによる急速な体温上昇も控えめにしてください。

黒田IMRは『精子側の技術に特化』している男性不妊専門クリニックです。一連の「黒田メソッド」による特殊技術の中に『精子機能異常を正確に見極められる精密検査』『質の高い精子を分離・選別する技術』があります。精子の状態を正確に把握されたい方や、ご心配の方はご相談ください。

精子の質を保つための対策

1.生活習慣の改善

健康的な生活習慣を心がけることで、精子の質を保つことができます。抗酸化物質を多く含む食品(パプリカ、ほうれん草、ブロッコリーなどの緑黄色野菜や、お茶、大豆など)を積極的に摂取したり、適度な運動も取り入れて体の新陳代謝を上げましょう。また質の高い睡眠を確保することは、精子にとっても大切です。

2.高熱の予防

高熱は、精子の健康維持にとって無視できないリスクファクターです。定期的な健康診断を受けて しっかり健康管理をして、免疫力を落とさないようにしましょう。また感染症が流行する季節には徹底した手洗い・うがいを習慣化して、高熱を引き起こす病気の予防に努めてください。予防していても発熱してしまった際には、早期に医療機関を受診して適切な治療を受けてください。なるべく早く体温の上昇を抑えることが、精子の質を守るためには大切です。

高熱と精子の質に関するFAQ

高熱が精子の質に影響を与えるのはなぜですか?

精子を造る機能(造精機能)が正常に働くためには、精巣(睾丸)の温度が体温より低く保たれている必要があります。ですから、インフルエンザ、コロナ、おたふく風邪などに罹患して発熱し、高温が数日間続くと、精巣の適正な温度が保たれなくなり、造精機能が障害されてしまいます。結果として「精子数:量」や「精子機能:質」が著しく低下する危険性があります。

高熱による精子の質の低下は、どのくらいの期間で回復しますか?また、永続的な影響はありますか?

高熱の影響は、精子を造るサイクルに依存しますので、その影響は発熱直後というよりは 数週間〜数ヶ月後に、精液検査では「精子数の減少」という形で、また高精度精子検査では「精子機能の低下」という形で表面化してきます。数ヶ月で回復する場合もありますが、精巣(造精機能)へのダメージが大きい場合は不可逆的(永続的)になることも少なくありません。不可逆的な影響が認められた場合は、妊活において生殖補助医療による不妊治療が必要になる可能性が高くなります。

コラム:精子の質を正確に調べる方法は?高精度な精子検査【専門医の解説】

日常生活において、高熱から精子の質を守るためにできる対策を教えてください。

高熱の予防と生活習慣の改善が重要です。

高熱の予防と早期対応感染症が流行する季節には手洗い・うがいを徹底し、発熱した際にはなるべく早く体温の上昇を抑えるため、早期に医療機関を受診して適切な治療を受けてください。

生活習慣の改善抗酸化物質を多く含む食品(緑黄色野菜、大豆など)を積極的に摂取し、適度な運動、質の高い睡眠を確保することが大切です。また、精巣の温度を急激に上げるサウナなどの利用は控えめにすることが推奨されます。

コラム:妊活男性の食生活は?サプリメントは必要?生活習慣は?

Author information

黒田インターナショナル メディカル リプロダクション院長。不妊治療で生まれてくる子ども達の健常性向上を目指して「高品質な精子の精製法および精製精子の機能評価法の標準化」と共に「次世代の不妊治療法」を提唱し、日々の診療と講演活動に力を注いでいる。

目次