タイミング法で妊娠の成功率を高めるには│失敗しないために考えること

2022.04.27
タイミング法で妊娠の成功率を高めるには│失敗しないために考えること

排卵・妊娠の仕組みとは

タイミング法を説明する前に、排卵や妊娠の仕組みについて簡単に解説します。

妊娠するためには、「排卵日にタイミングを取らないと駄目!」ということは、皆さんご存知かと思います。そもそも「排卵日とは?」どのような日をいうのでしょうか?

卵子は、卵巣の中にある卵胞という袋の中にいます。卵胞は、脳下垂体から分泌されるホルモンの刺激により、卵胞内のパラクラインおよびオートクライン因子が働いて成熟を始め、その中から最も成熟を進めた選ばれた1つの卵胞が成熟卵胞となり、卵子を排出します。これが「排卵」です。

排卵は、月経周期が28日の場合、14日目頃に起こりますが、生理周期にも個人差がありますので、排卵日も必ず14日目頃とは言い切れません。また、生理周期も排卵日も安定している女性でも、多少のズレは起きますので、排卵日をピッタリ把握することは、意外に難しいのです。

排卵された卵子は、卵管の先にある卵管采に取り込まれ、その少し奥の卵管膨大部という場所で、遡上してくる精子を待ちます。排卵が近づくと子宮の入り口には、精子が通り抜けやすいように頸管粘液という透明で粘性の高い分泌物が増えてきます。
性交により腟内に射精された精子は、排卵期に増える頚管頸管の手伝いもあり、子宮内に泳ぎ上がり、卵管を通って卵管膨大部に達します。実際のところ、ごく僅かの選ばれた精子しか、卵管膨大部にいる卵子のもとに到達することはできません。

排卵された卵子の寿命は約24時間、精子の女性体内での寿命は72時間といわれますが、実際に受精が可能となるのは半日位と考えられていますので、この短い間に、卵管膨大部にいる卵子と遡ってきた精子がぴったりのタイミングで出会わなければ、受精しません。

受精した卵(受精卵)は、卵管内で細胞分裂を繰り返し、5日ほどかけて子宮に移動します。

受精卵の細胞分裂に伴って染色体が動き出す

受精卵の細胞分裂(左)に伴って染色体が動き出す(右)

奇跡的な出会いから7日目頃には、子宮内膜に着床し、妊娠が開始されます。

妊孕性のある夫婦の場合は、自己管理で避妊をせず性交を営むと、一定期間内に大多数の方が妊娠していきます。

この一定期間を過ぎても妊娠しない場合に、不妊症と診断します。日本産科婦人科学会では、「一定期間を1年」としていますが、不妊の原因は夫婦毎に異なりますので、一概に1年と言い切ることはできません。特に、卵巣機能(卵子を形成する力)は高齢化に伴って低下し、妊娠し難くなることは事実ですので、女性の年齢によっては早めに専門施設を受診した方がよろしいかと思います。

タイミング法とは 

タイミング法とは、妊娠を目的に排卵日を診断して性交のタイミングを併せる指導を行う方法です。排卵日をピッタリ決定することは意外に難しいので、推定排卵日の数日前から経腟超音波検査で卵胞を測定し、卵胞の直径が20mm位になった時期に合わせて血中ホルモン値も測定し、厳密に排卵日を推定して性交を取るべき最適な日を指導します。

ただし、当然のことですが、タイミング法を試みる前に、精子の精密検査をはじめ、卵管の疎通性があることを確認する検査や、有効な排卵が促されていること等、自然に妊娠できる可能性を裏付けるための最低限の検査をする必要があります。

その上で、医師の指導管理のもと、3周期ほどタイミング法を試みて妊娠できない場合には、人工授精や体外受精、顕微授精等の生殖補助医療への展開も考慮された上で、担当医と相談することをお勧めします。

タイミング法の成功率は? 

タイミング法の成功率ですが、20%前後といわれていますが、一概に○%ということはできません。
不妊でない夫婦は、上述しましたが、自己管理で「そろそろ排卵かな?」という時に、避妊をせず性交を営むだけで、1年以内には妊娠される場合が殆どです。

一方、不妊である夫婦は、専門施設に通院して色々な検査をして、また少しでも妊娠率を上げられるように、内服薬や注射で卵巣を刺激して排卵を誘発した上で、性交を取るべき最適な日を指導されても、なかなか結果に繋がらない場合も多いのも事実です。

医師の指導管理のもと、3周期ほどタイミング法を試みて妊娠できない場合には、人工授精や体外受精、顕微授精等の生殖補助医療への展開も考慮された上で、担当医と相談することをお勧めします。

タイミング法で重要なポイントとは

毎朝、基礎体温を記録することは面倒だ!と思われていらっしゃる女性も多いことと思います。その必要性に関しては、色々な意見もありますが、コストや痛みを伴うことではありませんし、排卵を予想するために役に立ちますので、なるべく基礎体温をつける習慣を身につけましょう。

自分で排卵日のタイミングを掴むことは なかなか難しいですが、排卵が近づくと頸管粘液という透明で粘性の高い分泌物が増えたり、また胸が張って痛かったり、下腹部に膨満感を感じたり、というような症状がでてきますので、自覚できたらタイミングを試みるように心がけることも大事です。

ただし、タイミングを取る日の精子の状態にも気遣いをしなくてはなりません。事前に専門施設における精子の精密検査で、精子異常が否定され、精子の品質が保証された場合においても、ちょうど排卵日に合わせた最適な禁欲期間で射精しなくてはなりません。つまり禁欲期間が長すぎても短すぎてもいけないということです。ですから、夫も妻の推定排卵日を意識しながら、自身の精子の管理をしなくてはならないのです。

確率を高めるために排卵誘発剤などの薬使うべきか?

妊娠できる可能性を少しでも上げられるように、タイミング法に、内服薬や注射で卵巣を刺激して排卵を誘発する排卵誘発法が取り入れられる場合もあります。このケースでは、薬剤の効果を厳密に判定するために、経腟超音波検査による卵胞測定とともに、血中ホルモン値も測定しなくてはなりません。また、タイミングを取るべき日を指導するにあたり、排卵を起こさせるスイッチを入れるための注射も必須になりますので、通院回数や費用の負担が増えます。

ステップアップを検討する時期

前述しましたが、医師の指導管理のもと、3周期ほどタイミング法を試みて妊娠できない場合には、人工授精や体外受精、顕微授精等の生殖補助医療への展開も考慮された上で、担当医と相談することをお勧めします。

人工授精、体外受精、顕微授精等の生殖補助医療には、それぞれにメリット・デメリット・リスクがありますので、十分な知識を備えた上で、夫婦でよく検討を重ねてから取り組んでいただきたいと思います。夫婦毎に最適な治療法は異なりますので、各夫婦に見合った安全な方法を選択してください。

まとめ

妊活を考えた方へのメッセージですが、精子の質を調べる精密検査をなるべく早い時点でやりましょう。その結果により、方向性が見えてきます。
詳細は、精子機能検査の項目を参照ください。

監修者│黒田 優佳子

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監修者│黒田 優佳子

黒田インターナショナル メディカル リプロダクション院長。不妊治療で生まれてくる子ども達の健常性向上を目指して「高品質な精子の精製法および精製精子の機能評価法の標準化」と共に「次世代の不妊治療法」を提唱し、日々の診療と講演活動に力を注いでいる。

出版
不妊治療の真実 世界が認める最新臨床精子学
誤解だらけの不妊治療

主な監修コラム
不妊治療について
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