カフェインやアルコールは精子に悪影響があるの?男性の妊活について解説

黒田優佳子 医師
この記事の執筆者 医師・医学博士 黒田 優佳子

慶應義塾大学医学部卒業後、同大学大学院にて医学博士号を取得。
その後、東京大学医科学研究所 生殖医療研究チームの研究員として、男性不妊に関する基礎・臨床研究に従事。
臨床精子学の第一人者としての専門性を活かし、男性不妊に特化したクリニック「黒田IMR(International Medical Reproduction)」を開院。
診察から精子検査・選別処理、技術提供に至るまで、すべてを一人の医師として担う体制を確立。専門性の高い診療を少数精鋭で提供しつつ、啓発・講演活動にも取り組んでいる。

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精子への影響 カフェイン、アルコール
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カフェイン摂取による精子への影響

カフェイン摂取が精子に「どのような影響を与えるのでしょうか?」色々な意見がありますが、基本的に適量のカフェイン摂取(1日当たりコーヒー1~2杯程度)であれば、精子への影響を心配する必要はありません。

「コーヒーには がんを抑える効果がある」という科学的データもあり、健康のためにも取り入れた方が良いという側面もありますが、一方でカフェインは、神経を鎮静させる作用を持つ「アデノシン」という物質の化学構造と類似しているため、体内に入るとアデノシン受容体(アデノシンが結合する部位)に結合し、アデノシンの働き(神経鎮静作用)を阻害して神経を興奮させる作用もあります。ですから、カフェインを摂取しすぎると中枢神経系を過剰に刺激し、さまざまな健康被害を引き起こします。また長期的な作用として高血圧を招く可能性も指摘されています。当然のことですが、1日当たりコーヒー1~2杯程度のカフェインを目安にした常識的な範囲でのコーヒーの摂取を心がけましょう

とくに市販されているエナジードリンクや眠気覚まし用の清涼飲料水のカフェインには注意が必要です。こういった飲料の成分表示は多くの場合 100 ml当たりの濃度で書かれていますが、缶や瓶1本当たりにするとコーヒー約2杯分に相当するカフェインを含むものもありますので、1日に何本も飲まないようにしてください。

アルコール摂取による精子への影響

皆さんがよく耳にする二日酔いは、アルコールの分解が間に合わず、アセトアルデヒドの血中濃度が上昇することが原因で起こります。アセトアルデヒドは細胞傷害性が高いので、精巣にも悪影響がある可能性は否定できません。

しかし、いくらお酒を飲んでも酔わない方がいらっしゃる一方で、採血する際のアルコール綿の消毒で皮膚が発赤する方もいらっしゃるように、アルコール分解能力には大きな個人差があります。そのため、二日酔いが どの程度精子に悪い影響を与えるかは 一概に言えませんが、とくにアルコール分解能が低い方でない限り、1日1~2杯のビールを摂取しても精子の異常に直結する心配はありません。

もちろん過度の飲酒や長期間にわたる飲酒は、肝硬変や痴呆、がん等との関連性が考えられます。精子への影響のみならず、健康を維持するためにも、カフェインと同様に常識的な範囲でのアルコールの摂取を心がけましょう

まとめ

普段の食生活で「偏食を避けて多くの品目を食す」という、バランスのよい食事習慣を心がけていれば、適量のカフェイン(1日当たりコーヒー1~2杯程度)やアルコール(1日当たりビール1~2杯程度)を摂取することが精子の異常に直結する心配はありません。忙しい日々の中、妊活に向けて「何もかも駄目!」ではストレスが溜まってしまいますので、常識的な範囲内でご判断なさってください。

【妊活男性に向けての豆知識】男性不妊の原因の大半は精子の異常です。生活習慣の改善などで回復を期待できる場合もありますが、実際の治療対象になる精子異常の大半は、その背景に遺伝子異常(先天異常)が関与しているケースですので、治療が難航します。ご心配の方は、早い時点で高精度な精子検査を受けてください。

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黒田インターナショナル メディカル リプロダクション院長。不妊治療で生まれてくる子ども達の健常性向上を目指して「高品質な精子の精製法および精製精子の機能評価法の標準化」と共に「次世代の不妊治療法」を提唱し、日々の診療と講演活動に力を注いでいる。

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