カフェインやアルコールは精子に影響するのか?
男性の妊活について解説

公開日:2022.08.08
更新日:2023.02.22

監修者 | 黒田 優佳子

精子学に特化した黒田IMRの院長

カフェインやアルコールは精子に影響するのか?<br>男性の妊活について解説

カフェイン摂取による精子への影響

カフェインは、神経を鎮静させる作用を持つアデノシンという物質と化学構造が類似していますので、アデノシン受容体(アデノシンが本来 結合する部位)に結合してしまい、アデノシンの働き(神経鎮静作用)を阻害し、神経を興奮させます。

ですから、過度なカフェインの摂取により、中枢神経系が過剰に刺激されると、様々な健康被害を招きます。またカフェインの長期的な作用としては、高血圧になる可能性が指摘されていますので、精子への影響のみならず、健康を維持するためにも、常識的なカフェインの摂取をお勧めします。

特に、市販されているエナジードリンクや眠気覚まし用の清涼飲料水の成分表示の多くは、100 ml当たりの濃度で書かれています。缶や瓶1本当たりにすると、コーヒー約2杯分に相当するカフェインを含むものもありますので、1日に何本も飲まないように注意してください。

一方で、「コーヒーには がんを抑える効果がある」という科学的データもあります。適量のカフェイン摂取(1日1~2杯のコーヒー)であれば精子への影響を心配する必要はありません。

アルコール摂取による精子への影響

みなさんがよく耳にする二日酔いは、アルコールの分解が間に合わず、アセトアルデヒドの血中濃度が上昇することが原因です。アセトアルデヒドは細胞傷害性が高いので、精巣にも悪影響がある可能性は否定できません。しかし、いくらお酒を飲んでも酔わない方がいらっしゃる一方で、採血する際のアルコール綿の消毒で皮膚が発赤する方もいらっしゃるように、アルコール分解能の個人差が大きいため、一概にどの程度精子に影響するかはわかりませんが、とくにアルコール分解能が低い方でなければ、1日1~2杯のビールを摂取しても精子の異常に直結する心配はありません。

ただし当然のことですが、過度の飲酒や長期間にわたる飲酒は、肝硬変や痴呆、がん等との関連性が否定できませんので、精子への影響のみならず、健康を維持するためにも、常識的な飲み方をお勧めします。

まとめ

日々の忙しい中、妊活に向けて「何もかも駄目です!」では、逆にストレスが溜まります。

日常の食生活において、バランスよく、「偏食を避けて多くの品目を食す」という食事習慣を心がける中で、適量のカフェイン(1日1~2杯のコーヒー)やアルコール(1日1~2杯のビール)ならば摂取しても精子の異常に直結する心配はありません。常識的な範囲内でご判断ください。

しかし、実際の不妊治療の現場で問題になる精子異常は、その背景には遺伝子の問題(先天異常)が関与しているケースが殆どですので、この場合は対象外になります。

監修者│黒田 優佳子

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監修者│黒田 優佳子

黒田インターナショナル メディカル リプロダクション院長。不妊治療で生まれてくる子ども達の健常性向上を目指して「高品質な精子の精製法および精製精子の機能評価法の標準化」と共に「次世代の不妊治療法」を提唱し、日々の診療と講演活動に力を注いでいる。

出版
不妊治療の真実 世界が認める最新臨床精子学
誤解だらけの不妊治療

主な監修コラム
不妊治療について
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