黒田IMRの院長ポリシーは「妊娠率を追求するあまり、治療の安全性を犠牲にしてはならない」ということです。医療行為は必ずリスクを伴いますので、生殖補助医療だけが例外ということではありません。一般的に顕微授精は最も高度な技術と思われがちですが、顕微授精で生まれた子どもの安全性に関しては未だ不明な点が多いのも事実です。
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見た目だけでは解らない、精子機能の異常!これが危険!
治療現場では「運動精子=良好精子」という認識にありますので、「元気に泳いでいる精子=運動精子」が生殖補助医療に用いられています。しかし実は、見た目が良好な運動精子でも、見た目だけでは解らないDNA損傷をはじめとする精子機能に異常がある場合も多いのも事実です。
これまで顕微授精において、どのような精子を卵子に穿刺注入すれば安全なのか?言い換えれば、穿刺注入する精子の機能異常が出生児にどのような影響を及ぼすか?については、不思議な程に着目されず議論されませんでした。
現在に至るまでの約40年、精子学を専攻してヒト精子の研究を継続してきた院長の立場から申し上げれば、精子選別基準が曖昧であることに大きな不安を抱いておりました。具体的に申し上げれば、隠れた機能異常を有する運動精子を穿刺注入した顕微授精で妊娠、出産に至った場合に、生まれてくる子どもに何かしらの異常を発症させる可能性を否定できないということです(詳細は後述)。
生まれてくる「子どもの安全を第一」に考えて、安全な顕微授精を!
治療現場では「精子異常と顕微授精と出生児への影響との間に因果関係があると決定した訳ではないから、顕微授精を実施しても構わない!」という考え方が定着しています。一方で黒田IMRの院長は、命を生み出す生殖補助医療において、生まれてくる子どもの安全が最優先であることを踏まえ、「安全性が保証されている訳ではない顕微授精を なるべく回避しよう」という診療ポリシー(詳細は後述)です。
安全性の高い生殖補助医療(顕微授精のみならず)を実現させるためには、事前に機能異常精子を積極的に排除する、言い換えれば、安心して治療に用いることができる安全な精子の「選別」と安全な精子であることを「確認」できる高度な技術が必須になります。とくに安全な顕微授精実施の前提条件は、精子の質が良好であること、具体体に言えば、DNA構造も含めた精子機能が正常で、穿刺注入できる安全なレベルであることを「確認」できて「確保」できること、精子の品質管理を徹底するということです。なぜならば、顕微授精は精子の量的不足(精子数が少ない)をカバーできますが、精子の質的低下(DNA損傷を含む精子機能の異常)を補償することはできない技術だからです。
上述しましたように医療行為は必ずリスクを伴いますので、なるべく自然に妊娠する原理に近づけるような技術提供が安心・安全に繋がるのです。つまり「性交で膣内に射精された精子が卵管内の卵子に到達する迄に、精子の質の選別が自然に行われる」という仕組みを再現する技術を開発し、リスクを伴う人為的な医療行為を極力減らす方向に徹することが、生まれてくる子どもの健常性の向上に貢献すると考えます。
黒田式治療戦略は、顕微授精のリスク回避に繋がる
黒田の最終的な生殖補助医療の安全戦略として、高度な精子「選別」技術 および 高精度な精子「評価」技術とともに、人工卵管法という次世代の体外受精技術の高度化(高効率媒精・卵管型微小環境体外受精)に展開することにより、媒精に用いる必要精子数の低減化(少ない精子数で受精させること)が可能になり、高品質な精子が少ない場合でも、卵管を模した細い流路を精子が自力で泳ぎ、卵子に辿り着いた最初の1匹が卵子と受精し、顕微授精を回避できるようになりました。
要するに、顕微授精をしなくても、極少数の選別した高品質精子で効率よく体外受精で受精を可能にする『新しい男性不妊治療』もあるということです。本法が顕微授精に伴うリスクの回避につながり、生殖補助医療の安全性向上に寄与すると考えています。つまり、黒田式の安全対策を講じた生殖補助医療は、現行の「運動精子が1匹でもいるのなら、採卵して顕微授精を繰り返していればいつかは妊娠する」という概念と全く逆の着眼点になります。この一連の黒田式治療戦略を統合的に運用しました結果、前医にて顕微授精を数十回も試みても妊娠に成功しなかったご夫婦に妊娠、出産を可能にした事実を多数確認しております。