一般的に「不妊」というと女性側の問題と思われがちですが、実は不妊の半分は男性側に原因があり、男女の不妊原因が複雑に絡み合っております。ですから、実は検査により原因を特定できるケースは、むしろ少数なのです。
男性不妊の約90%が精子形成障害
すでに、男性不妊の約90%は精子の形態や機能に問題がある精子形成障害(精子異常)であること、しかも精子数や運動率などの見かけだけでは見極められない隠れた精子機能の異常が潜んでいる場合が多いこと、またその背景には遺伝子の問題が関与している場合が多く治療が難航し、精子の問題は深刻化するということを申し上げてきました。
つまり、精子異常には、一般的に言われているように、卵子の老化と同様に加齢に伴い悪化するとか、飲酒、喫煙、極端なダイエット、食品添加物や遺伝子組み換え食品、化学物質による環境汚染や電磁場などの影響が大きいとか、そのような単純な話ではなく、実は遺伝子異常が関与している場合が多いということです。
早期発見のカギは精子機能の精密検査
ですから、なるべく早い時点で精子機能の精密検査を受けていただくことをおすすめします。詳しくは精子異常の項目ならびに精子機能の精密検査の項目を参照してください。
原因特定できるケースと具体例
繰り返しになりますが、男性不妊の約90%が精子異常(遺伝子異常)であり、原因を特定できるケースの方がむしろ少数であると申し上げましたが、中には原因が明らかになる場合もあります。以下に、簡単に列挙しておきます。
① 精路通過障害といい、精子の通り道である精管の通過に問題がある場合です。具体的には、精路の炎症(精巣上体炎や精管炎など)、逆行性射精(内尿道口の閉鎖不全により射精時に精液が膀胱へ射精される場合)、閉塞性無精子症(精子形成は正常で精子機能には問題が認められませんが、射精する通路が閉塞されている場合)などが挙げられます。
② 性機能障害といい、精子形成や精子輸送路には問題が認められませんが、勃起や射精といった性機能に問題があり通常の性交ができない場合です。具体的には、勃起障害や射精障害などが挙げられます。
③ 精子形成障害(精子異常)の中で、上述しましたように原因が明らかになる場合は極めて少ないのですが、内分泌疾患、精索静脈瘤、耳下腺炎(おたふくかぜ)による精巣炎や、停留精巣(胎児のころは腹腔内にある精巣が生後数か月たっても陰嚢の中におりてこない病態)などが挙げられます。
精液検査についてはこちらのページ(精液検査)を参照ください。