妊活に向けて不妊治療による医療介入を考慮した際に、生殖補助医療という言葉を必ず耳にすることでしょう。何のことを指しているのでしょうか?多くの方は、体外受精や顕微授精のことを言うと理解されていますが、正確に申し上げますと「妊娠を成立させるために、ヒトの卵子や精子、胚を取り扱うことを含む治療法を総称」して『生殖補助医療assisted reproductive technology:ART』といいます。具体的に列挙したしますので、ご参照ください。
目次
生殖補助医療の種類
生殖補助医療の種類
1.体外受精・胚移植 in vitro fertilization:IVF
2.顕微授精:卵細胞質内精子注入・胚移植
Intra-Cytoplasmic Sperm Injection:ICSI
3.凍結・融解胚移植
ここで精子と卵子の出会いについてお話します。性交により射精時には膣内に「数億匹の精子」が放たれますが、精子形成が正常な男性の場合でも子宮腔内へ進入できるのは「選ばれた僅かな精子だけ」です。どういうことか?と言いますと・・・
元気な精子であれば、性交により腟内に射精されてから数十分のうちに子宮腔内に進入しますが、そこからさらに子宮の奥の卵管を遡上していく過程で、精子の数はどんどん減っていき、最終的に卵子に到達できるのは「数十匹程度の精子」と考えられています。
つまり、「受精する」ということは、『数億匹の精子から選ばれた優秀な精子1匹』が卵子の元に辿り着き、命の誕生を可能にするという、なんとも神秘的で奇跡的な出会いなのです。精液中に元気な精子が少なければ「卵子に到達できる精子が全くいない」ということもあるわけです。
その精子の効率の悪さを克服するために、顕微授精や体外受精などの生殖補助医療は「できるだけ卵子の近くに精子を届ける」ことを目指してきた技術です。その根底には、精子の数が少ないのであれば「限られた精子で受精の可能性を高める」、精子の運動能力が低いならば「精子が卵子に泳ぎ着くまでのエネルギー消費を少しでも抑える」といった考え方がありました。その着眼点を踏まえて、以下に説明する生殖補助医療の治療内容をご理解ください。
生殖補助医療の治療内容
1. 体外受精・胚移植
in vitro fertilization – embryo transfer:IVF・ET
静脈麻酔下に体外に卵子を取り出し(採卵)、精子と共存(媒精)させ、数日間培養します。その間に受精が成立した場合に受精卵になります。その後の胚成長を見極めた上で、胚を子宮に移植(胚移植)する治療法です。
本法が導入された当初は、卵管が障害されていることが原因で妊娠できない女性のために用いる治療法でしたが、現在は適応範囲が広がり、その他の不妊原因の治療法としても使われています。
2. 顕微授精:卵細胞質内精子注入・胚移植
Intra-Cytoplasmic Sperm Injection – embryo transfer:ICSI・ET
精子の数が少ない場合や運動率が低い場合などの男性不妊や、受精障害など、体外受精では受精が難しい場合に、細い針の中に精子を 1 匹だけピックアップして卵子に穿刺、精子を注入して人工的に授精させる治療法です。
生殖補助医療の中でも顕微授精は、① 受精に必要な精子が1匹で済むこと、② 人工的に授精させられる(受精率を上げられる)こと等、利便性が高いことから適応範囲が広がり、生殖補助医療の主流になっています。
3. 凍結・融解胚移植
得られた胚を凍らせて保存しておき、その凍結胚を解凍して移植する治療法です。
様々な目的により利便性がありますが、胚の状態(精子や卵子の品質評価も含めて)や夫婦の不妊病態(経緯や背景も含めて)を見極めた上で適正な判断が必要です。
精子側から生殖補助医療に求められることは?
冒頭で、沢山の精子の中から自然に選ばれた1匹が卵子と出会うという、受精の神秘的な仕組みをお話しましたが、この点を踏まえますと、顕微授精をはじめとした生殖補助医療で誕生する子どもの健常性を保証する(健康な赤ちゃんを誕生させる)には、卵子に自力で辿り着ける『数億匹の精子から選ばれた優秀な精子1匹』と同等の品質を備える精子を治療に用いることが求められます。つまり、本来ならば女性の体内で自然に行われるはずの正常な精子の選別を、人の手で(人工的に)代行できなければなりません。生殖補助医療に用いる精子の「品質管理」を徹底することが、精子側から「安全な命」を誕生させることに繋がるわけです。
まとめ
日本では、1983年に体外受精で、1994年に顕微授精で、初めて赤ちゃんが誕生しました。それから約30~40年が経過しました。この間、とくに ここ10年で不妊を専門にする医療機関が急激に増加しました。結果として生殖補助医療が急速に普及し、不妊治療が身近な医療になり、2020年代には約10人に1人が生殖補助医療で誕生するまでに至っております。
しかし一方で、生殖補助医療で生まれた子供達が平均寿命まで健康に成長できたことを確認した人はいないというのが現実です。生殖補助医療の歴史は浅いという認識をもって、安全かつ適正な不妊治療を選択していただきたいです。
黒田IMRは、院長を含む精子研究チームが 長年にわたり開発してきた『高度な精子側の関連技術』を駆使した『安全性と有効性の高い男性不妊治療』をご提供しています。
まずは精子の質を正確に見極めることができる『分子生物学的な手法による高精度な精子検査』を受けにいらしてください。科学的な根拠に基づいた詳細情報を把握できますので、その方の精子のタイプに最適かつ安全な治療法を具体化させることが可能になります。是非とも効率的な妊活をしてください。
不妊治療の種類に関するFAQ
- 生殖補助医療(ART)とは何ですか?主な種類を教えてください。
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生殖補助医療(ART)とは、妊娠を成立させるためにヒトの卵子や精子、胚を体外で取り扱う治療法の総称です。 主な種類には以下の3つがあります。
- 体外受精(IVF): 卵子と精子を同じ容器に入れ、自然に受精するのを待つ方法。
- 顕微授精(ICSI): 細い針を使って1匹の精子を直接卵子に注入して人工的に授精させる方法。
- 凍結・融解胚移植: 得られた胚を一度凍結保存し、最適なタイミングで子宮に移植する方法。
- 顕微授精(ICSI)と体外受精(IVF)の違いは何ですか?実施する際の「注意点」を教えてください。
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大きな違いは「受精のプロセス」と「必要な精子の数」にあり、注意点は「受精に用いる精子の選定基準」にあります。
- 体外受精: 精子が自力で卵子の層を突き破って受精する必要があるため、ある程度の精子数と運動率が求められますが、最も注意すべき点は事前に「先体反応が正常である(卵子に侵入できて受精できる)精子」を選別しておく必要がある点です。
- 顕微授精: 授精に必要な精子が1匹でよく、人工的に授精させられる技術ですので、精子数が極端に少ない場合や運動率が低いなどの重度の男性不妊、または受精障害がある場合に行われています。しかしながら安全な顕微授精を実施するためには「機能異常がなく、質が高いことを保証できた精子」を用いることが必要不可欠になります。
- 殖補助医療(とくに顕微授精など)において、精子の「質」が重要なのはなぜですか?
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自然妊娠では行われる「優秀な精子の選別」を医療側が代行する必要があるからです。 自然妊娠では、数億匹の精子のうち、厳しい選別を勝ち抜いた「最も優秀な1匹」だけが卵子に到達します。しかし、顕微授精では人の手で1匹を選び、人工的に授精を可能にしますので、以下の点への配慮が必要不可欠になります。
- 次世代への影響: 選ばれた精子の品質(DNA損傷を始めとする、隠れ精子異常の種類と程度)が、生まれてくる子どもの健常性に直結します。
- 高精度精子検査: 事前に外見上の数や形だけでなく、DNA損傷などの「隠れ精子異常があるのか否か」を精密検査により把握しておくことが大切です。
- 質の高い精子を選別:事前に隠れ異常がない「高品質な精子を選別」できていること、逆に言えば「異常精子を排除」できていることが「安全かつ適正な治療の鍵」となります。
記事:黒田IMRの高度な精子選別技術について