男性不妊症とは?その原因やケースを詳しく解説!

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男性不妊症とは?

一般的に「赤ちゃんができない、不妊かも?」となりますと、その原因は女性側にあると思われがちです。しかし実情は、男性側に原因がある「男性不妊」が不妊の約半数を占めています。つまり、男性不妊が意外と多いということです。

しかも男性不妊の大半が「精子に何かしらの問題」がある造精機能障害(精子異常)です。精子異常を発症させている原因が検査により明確になり、手術などで改善が期待されるケースがある一方で、なかなか治療が難しいケースもあります。

男性不妊「精子」の問題は、奥が深い問題です。
結論から申し上げれば、「精子の問題をいかに解決できるか!が不妊治療の鍵になる」ということです。

男性不妊の原因は?

実は、男性不妊の原因を特定できて治せるケースの方が少ないため、男性不妊の治療は難航します。

前述していますが、男性不妊の約90%は、精子の形態や機能に問題がある「造精機能障害:精子異常」です。しかも、精子異常の殆どが、一般的に言われているような「精子数が少ない」とか「運動率が低い」など、一般精液検査で用いる普通の顕微鏡(位相差顕微鏡)で見ただけでは見極めることができない、精子の中に隠れた異常です。この精子の中に隠れた異常を『隠れ精子異常』と言っていますが、具体的に言えば、精子DNA損傷をはじめとする多様な機能異常であったり、精子の頭の中に隠れた構造異常だったりします。

隠れ精子異常の種類と程度、すなわち「どのような精子異常が隠れているのか?」「その精子異常が、どの程度 重篤なのか?」には、大きな個人差があり、一律同じ異常パターンではありません。ということは、精子異常を引き起こす原因は複雑であるということです。具体的に言えば、この隠れ精子異常の背景には『新生突然変異』という、父親から受け継いた遺伝子ではなく、突発的に発生した不運な遺伝子の突然変異が関与しています。つまり、隠れ精子異常の殆どは先天異常(先天性)ですので治療が難航します。

【最も注意すべき点】それにもかかわらず、隠れ精子異常は位相差顕微鏡で検知されないため、一般精液検査で見逃されたまま間違った治療法に展開されてしまうことも少なくないという点です。隠れ精子異常を正確に検知するためには、分子生物学的な高度な技術による高精度精子検査(精子精密検査)をする必要があります。遺伝子異常による隠れ異常がある精子のタイプなのか否かにより、その後の治療の方向性が違います。具体的に言えば、「その方の精子異常のタイプに合った適正な治療法を選択できるか!が極めて重要になる」からです。
なるべく早い時点で精子精密検査を受けていただき、隠れ異常の有無を見極めておくことが効率的で、上手な妊活に繋がります。

精子異常は治せるの?- 不妊についてのお役立ち情報

【key point】

世間一般では、精子の問題に関しても、卵子の老化と同様に加齢に伴い悪化するとか、飲酒、喫煙、極端なダイエット、食品添加物や遺伝子組み換え食品、化学物質による環境汚染や電磁場などの影響が大きいとか語られていますが、精子の問題はそのような単純な話ではありません。言い換えれば、精子を元気にするために、生活習慣の改善にはじまり、コエンザイムQ10などの加齢のストレスを抑える抗酸化剤のサプリメントや漢方薬等のお話をよく耳にしますが、上述したように、精子の問題には、生まれつきの遺伝子異常が関与している場合が多いため、実際のところ、精子の問題に対し、それらの効果を期待することはできません。

男性不妊の原因を特定できるケースは意外と少ない!

とくに生殖補助医療の治療対象になる精子異常においては、その大半が遺伝子異常(先天性)による男性不妊です。ですから、実際の治療現場における比率は低いですが、以下のような、原因を特定できる後天性の男性不妊もあります。参考までに簡単に列挙します。

①後天性の造精機能障害(後天性の精子異常)

内分泌疾患、精索静脈瘤、耳下腺炎(おたふくかぜ)による精巣炎や、停留精巣(胎児のころは腹腔内にある精巣が生後数か月たっても陰嚢の中におりてこない病態)等が原因で、造精機能障害(精子異常)になるケースもあります。

②性機能障害

性機能障害では、精子形成や精子輸送路には問題が認められませんが、勃起や射精といった性機能に問題があり通常の性交ができない場合です。具体的には、勃起障害や射精障害などが挙げられます。

③精路通過障害

精路通過障害は、精子の通り道である精管の通過に問題がある場合です。具体的には、精路の炎症(精巣上体炎や精管炎など)、逆行性射精(内尿道口の閉鎖不全により射精時に精液が膀胱へ射精される場合)、閉塞性無精子症(精子形成は正常で精子機能には問題が認められませんが、射精する通路が閉塞されている場合)などが挙げられます。

男性不妊の検査は?

男性の妊活において最初に行う検査が精液検査になりますが、一般的に男性不妊の検査として どのような検査があるのか、簡単に紹介します。

初診時に問診と診察がありますが、この点は内科をはじめ他の診療科を受診した際と同様です。具体的な検査ですが、精液検査の他に、ホルモン採血(必要に応じて染色体、抗精子抗体を含む)、超音波検査(精索静脈瘤・精巣腫瘍の有無を診る)等を行います。

中でも、精液検査は男性不妊の検査で最も重要です。私の専門でもありますので、黒田IMRのホームページで詳細に解説します。

詳しくは、現状の精液検査の問題点、および精子精密検査の項目を参照ください。
精液検査の採取手順とは? – 不妊についてのお役立ち情報

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黒田インターナショナル メディカル リプロダクション院長。不妊治療で生まれてくる子ども達の健常性向上を目指して「高品質な精子の精製法および精製精子の機能評価法の標準化」と共に「次世代の不妊治療法」を提唱し、日々の診療と講演活動に力を注いでいる。

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