妊活とは、本来希望をもって取り組むものであるはずが、結果が出ない時間が続くと、やがて“心の問題”が前面に現れてきます。「妊孕性」「加齢」「精子や卵子の質」といった医学的課題と向き合う中で、最も大きな壁となるのが、言葉にしづらい“心の負担”です。妊活に悩む多くの方が、今もその想いを抱えたまま日々を過ごしています。本記事では、妊活に悩む女性や男性の心の問題にも着目して執筆しています。妊活でお悩みの方は是非お読みください。
目次
黒田IMR初診時「女性たち」の心の叫び
・妊活を始めてかなりの時間が経つのに、なかなか赤ちゃんが「できない」・・・
・こんな心の重い悩みを抱えるとは・・・
・結婚して、そろそろ・・・と思って妊活すれば、授かるものだと思っていた・・・
・周囲で出産する友達も増えていく中、どこかで置いてきぼりにされている「孤立感」・・・
・歳は重ねて卵子はどんどん老化していくし・・・「どうしよう?」
・いつまで続くのだろう? 終わりのない不妊治療、先が見えない「不安感」・・・
当院初診時の「女性たち」の心の叫びです。一方で、黒田IMRには、院長 私の専門性もあり、男性不妊の方が多く治療に見えます。
黒田IMR初診時「男性たち」の心の叫び
・僕は、妊娠させられると思っていた・・・
・僕の精子が こんなに悪いなんて、現実を受け入れられない・・・
・今まで卵子が老化しているから「できない」と思っていた。実は、僕の精子だった・・・
・妻に申し訳ない、子どもを持たせてあげられない・・・
・治療が長引き、夫婦の関係が・・・どうしたらいいですか?
当院初診時の「男性たち」の心の叫びです。
男性たちも妊活に悩む時代! 女性だけではありません
一昔前は、女性は適齢期になったら結婚をして、なるべく早く子どもを産むことが当たり前の時代でした。令和の今では、仕事を持つ女性が増え、社会進出に伴って晩婚化が進み、結果として妊活に悩む時代になりました。なぜならば、女性の場合は、妊孕性が年齢に直結するからです。妊活を開始する年齢が若ければ若いほど子どもを産める可能性、母になれる可能性が高くなるということです。
一方で、「不妊は女性の問題!」という考え方が長い間 続きましたので、多くの男性は、高齢化しても「元気に泳いでいる精子=運動精子が1匹でもいれば、妊娠させられる!」という認識でした。
しかし精子の研究も徐々に発展し、臨床集積が進むことにより、実は、精子妊孕性(せいしにんようせい:妊娠させられる精子力)を左右させるのは「元気に泳いでいる」ことではなく、「精子の質が良好」であること、またその精子の「質の良し悪し」を決めている主たる要因は、先天性(生まれつき)の「遺伝子の問題」であることが明らかになってきました。つまり、運動良好な精子でも、その形成される背景に遺伝子異常が関与していれば、妊孕性が低い!ということが判明しました。ということは、若い男性でも精子妊孕性が低い方もおられるということです。ここに女性(卵子)との大きな違いがあります。
コラム:男性不妊症の原因と検査について詳しく解説
そのような時代的な背景の中で、さらなる研究と臨床の進歩に伴い、実は、精子の問題が不妊原因の約半数を占めることが判ってきました。今では「精子異常による男性不妊が意外と多い」ことが広く知られるようになり、男性の妊活に対する意識も大きく変わってきました。結果として、男性たちも妊活に悩む時代になりました。
妊活での「心の問題、心の負担」をどうしたらいいのだろうか?
「いつまで続けよう?」「不妊治療の止め時は?」先が見えない不安や苦しみを感じながら、時は流れていく。妊活を開始しても なかなか成果にならないと、とくに女性たちには どうしても「気持ちの焦り」が出てきます。また同時に、生理周期や基礎体温が乱れてきたり、体の衰えを自覚したり、いろいろな場面で「老化」を意識することも少なくありません。そのうちに心も折れてきて「妊活も、そろそろ難しいのかな?」という気持ちになることもあるでしょう。だからこそ、女性にとって「時は金なり」です。そのためにも、夫の多面的な協力は必須です。夫との関係性が良好であることが、妻の心と時間の充実に繋がります。
【夫側の多面的な協力とは? 具体的に どうすればいいの?】
- 精子の検査をすることは、男性にとっても「僕の精子は大丈夫!と思うけれど、もし悪かったら?」と不安になったり、「恥ずかしいな~!」と思ったり、精神的に辛いことですが、妻のためにも なるべく早い時点で実施するように協力してあげてください。また、できることならば、最初から、一般精液検査ではなく、精子の中に隠れた異常(この精子異常が妊活を難航させます)を正確に調べることができる「高精度な精子検査:精子精密検査」を受けてください。
- 精子の中に隠れた異常を調べることができない、一般精液検査で「精子の状態が悪い!男性不妊です!」と診断された場合には、改めて「高精度な精子検査:精子精密検査」を受けるように妻のために協力してあげてください。
精密検査をすることにより、精子の中に隠れている異常の「種類:どこの異常なのか?」と「程度:異常が重要なのか、軽症なのか」が明らかになります。そうなりますと、「対処できる精子異常のタイプなのか、対処できないのか」「対処できるのなら、どのような方法が適正で安全なのか?」が見えてきます。つまり、妊活を難航させる隠れた精子異常の詳細を把握することが、その後の安全な治療の方向性や見通しを適正に決める上で大切になります。結果として効率的な妊活になりますので、夫にとっても妻にとっても心の負担軽減になります。
- 精子精密検査の結果、対処法がある場合には、真摯に立ち向かってください。この夫の妊活に向かう姿勢や気持ちは、妻に伝わります。夫婦の良好な関係性を保つためにも頑張ってください。そうすることが妻の心の負担軽減になり、結果として夫の心の負担軽減になります。
- 一方で、自身の「精子に異常」があることが明らかになり、それが「生まれつきの遺伝子の問題」による異常で、精子妊孕性の限界を受け入れなくてはならない場合には、当然のこと、心の葛藤が生じます。
難航するであろう治療を「するのか、しないのか」また「継続するのか、断念するのか」を決断するためにも、妻との関係性において 互いの心の譲歩が必要になります。このときこそ、気持ちを切り替えて、心の安定性を取り戻すために、時間をかけて夫婦で向き合いましょう。しかし妻の年齢が高く、時間的な余裕が少ない場合には、夫にも気持ちの焦りが生まれます。まさに男性不妊治療は深刻です。
このような「なかなか思うようにならない!」という妊活の場面で、夫婦それぞれの、いや夫婦間の「心の問題に対して どう向き合うか」が、その後を円滑に進めることが「できるか、できないか」の分かれ道になります。
心の悩みを どこで話せるの?
妊活において“心の悩み” “心の負担”は必ず伴います。一人で抱えないことです。夫の気持ちを妻に、妻の気持ちを夫に「丁寧に」「正直に」伝える「努力」をしましょう。
それでも、お互いに直接伝えることが難しいと思ったら、医療機関内の医療従事者(第三者)を交えたカウンセリングの場を上手に活用することをお勧めします。妊活相談の場として、看護師や不妊カウンセラーらが担当している施設もあります。
黒田IMRでは、院長の私が直接「ご夫婦」「夫だけ」「妻だけ」とのカウンセリングの機会を積極的に設けています。1時間ほどかけて しっかり「心の問題に向き合う」ことを大切にしています。1回(約1時間)のカウンセリングでは解決できない場合には、何回か話し合いの場を設けています。約40年 生殖医療を専門にしてきた医師としての経験をもって、ご夫婦と一緒に悩み、心の痛みに寄り添うことによって、色々な解決法が見えてきます。お二人にとって「最適な方向性」を導くために、また「先が見えない不妊治療から一日でも早く脱却」できるためにもカウンセリングは大切です。
まとめ
不妊治療は辛いことばかり? いいえ、捉え方によっては良いこともあります。
治療を経験したからこそ、夫に対しても、妻に対しても、他の方に対しても、今まで気づくことができなかったことに気づけるようになったり、見えなかったことが見えてきたり、人間としての視野が広がることでしょう。
また妊活の苦労があるからこそ、「精子と卵子の奇跡的な出会い」によって誕生できた「尊い命」を感じることができ、命を通して「感謝の気持ち」が大きくなるでしょう。
妊活によって夫婦の関係性が悪くなることもありますが、今回の記事にまとめましたように、夫婦互いに協力しあう姿勢と思いやる気持ちがあれば絆が深くなり、一層夫婦が仲良くなれます。
黒田IMRは、院長の専門であることもあり、男性不妊の検査と治療に力を注いでいます。またカウンセリングも大切にしています。「丁寧な個別対応」をしている専門施設ですので、ご心配な方はご相談にいらしてください。