目次
約40年に及ぶ臨床精子学の「研究」と「臨床」から痛感させられたこと
ヒト精子の研究『臨床精子学』を専攻して約40年、黒田IMRの院長は、その成果を男性不妊の患者様のもとに橋渡して、多様な「精子異常」に取り組んで参りました。その長年の経験を通して痛感させられたことがあります。
1.一つ目は「不妊治療は究極の個別医療の位置づけになる」ということです。
不妊になる原因はご夫婦毎に多種多様です。男女の多様な問題が複雑に絡み合った結果、不妊になります。つまり、不妊の病態(状態)はご夫婦毎に違うということです。この点を踏まえて考えてみてください。実は、不妊治療は個別医療(標準治療に馴染まない医療)の位置づけになるということです。解りやすく言えば、ご夫婦毎の状態(ステージング)に合った治療法を選択しなくては成果を期待できないということ、不妊治療の「方法:治療法」も、治療に伴う「リスク」も、治療の「成果:妊娠率」も一律同じにはならないということです。
一律の治療を何回も繰り返しても結果に繋がらないご夫婦は一度立ち止まってください。「なぜ不妊になっているのか?」という、ご夫婦毎の不妊原因を正確に解析することが『最適で安全な治療プラン』を具体化させるために不可欠です。いかにご夫婦に合った『個別化治療』を技術提供できるのか!が成功への近道ということです。
2.二つ目は「精子に関する知識と技術の誤解」が、「顕微授精のリスク」を招いたということです。
治療現場では業務の効率化を図るために、医師と胚培養士(主に精子・卵子・胚等の取り扱い、顕微授精を行う職種)の分業化が進み、顕微授精が急速に普及しました。しかしながらその背景には、臨床精子学(ヒト精子を研究する学問)の専門家が極めて少ないという現実がありました。そのことが、科学的な根拠に乏しい不確実な精子情報を流通させ、医師と胚培養士の双方で精子に関する知識と技術の誤解を生み、結果として表面化していませんが顕微授精のリスクを招きました(後述)。
顕微授精は、精子の質が悪い方にはリスクがある!
私たち精子研究チーム(詳細は、黒田IMRホームページを参照ください)は、男性不妊の患者様のもとに橋渡しすることを見据えて、たくさんの精子側の関連技術を開発してきました。約40年、研究を進める過程で衝撃的な事実が明らかになりました。それは、治療現場では「運動精子(元気に泳いでいる精子)=良好精子」という認識にありますので運動精子が治療に用いられていますが、運動精子の中にDNA損傷を含む機能異常をもった精子が混在するという事実です。つまり、「泳いでいるということが、精子の質を保証できない」ということ、「運動精子を用いた治療の安全性を保証できない」という事実です。
ここで重要なお話です。顕微授精は、あくまでも精子の量的不足(精子数が少ない)をカバーする技術であり、精子の質的低下(DNA損傷を含む精子機能異常)を治す技術ではないという点に気づいてください。さらに顕微授精の最も怖い点は、受精に関わると危険な異常精子(DNA損傷精子)の人工的な授精を可能にする点です。ということは、顕微授精は精子の質的な異常がある方には危険な治療法になるということです。ここに顕微授精のリスクがあります。
院長「自ら」が治療の全工程を「一人」で行うことの真価は?
研究開発した精子関連技術を どのように組み合わせたら、ご夫婦に最適な個別化治療を行えるか、また安全な生殖補助医療を実現できるのか・・・について回答を出すために、治療の全工程を私一人で行う必要性があることを強く感じました。ホームページでも紹介していますが、黒田IMRの不妊治療は院長の初診カウンセリングから始まりますが、その後の精液から高品質精子の分離精製を行うこと、また分子生物学的手法を用いて高精度に精子を解析して正確な妊孕性を見極めること、さらに妻の検査、排卵誘発、採卵、卵子と精子のハンドリング、受精から胚培養管理(胚評価)、胚移植、精子と胚の凍結、母胎管理に至るまでの全工程における技術の提供を主治医である「院長自らが一人」で行っております。
全工程を一人で行うことは、診療効率の観点からみれば極めて非効率ですが、院長の精子研究者と医師の両者の視点があるからこそ、その精子のタイプに最適かつ安全性の高い、究極の個別化治療を実践することが可能になります。
院長一貫体制と個別化治療に関するFAQ
- 多くの不妊治療クリニックでは医師と胚培養士が分業していますが、なぜ黒田IMRでは院長が一人で全工程を行うのですか?
-
現場の効率化を優先するためには「分業体制」は必要ですが、精子や卵子を扱う現場(培養室)と患者様を診察する現場(診察室)がそれぞれ別の業務になることにより、ご夫婦の「不妊の全体像」を正確に把握することが困難になります。
皆さん、気づかれていませんが、不妊はご夫婦毎の「複数」の原因が「複雑」に絡み合った結果として起きてきますので、不妊治療は「究極の個別医療」の位置づけになります。と言うことは、一律の治療をしていても成果に繋がるご夫婦は不妊の状態が軽症なご夫婦ということです。重症な不妊の場合は、そのご夫婦の病態に合った個別化治療をしなければ反復不成功の道を辿ることになります。
黒田IMRでは、約40年 精子研究に携わってきた院長自らが、初診カウンセリングから精子精密検査、高度精子選別、胚培養、胚移植に至るまでの全工程を一人で担います。分業化しないことは極めて非効率ですが、研究者と臨床医の両者の目線から全体像を統合的に見ることが可能になりますので、患者様に最適な技術を適材適所で導入でき、「真の個別化治療」の提供が可能になるという利点があります。
- 「顕微授精は精子の質が悪い方には危険(不向き)」というのは、どういうことですか?
-
顕微授精という技術は、精子の「数が少ない(量的不足)」ことを補うことはできても、精子の「DNA損傷などの機能異常(質的低下)」を補償・修復することはできないからです。 一般的には「精子が1匹いれば顕微授精で妊娠ができる」と説明され、男性不妊治療には顕微授精が一択ですが、質的(機能)異常精子を人工的に受精させた結果、妊娠、出産に至った際には、出生児へのリスクに繋がる可能性があります。ここに顕微授精の最も怖い点があり、「顕微授精は精子の質が悪い方には危険(不向き)である」という理由です。
黒田IMRでは精子研究者でもある院長自らが、分子生物学的な解析で精子の「質」を正確に見極め、事前に危険な異常精子を排除する技術努力をして、治療の安全性向上を徹底しています。
- 他院でマニュアル通りの一律な治療を繰り返してきましたが結果が出ません。「究極の個別治療」とは何が違うのでしょうか?
-
不妊の原因や背景(治療歴、妻の年齢、精子の状態など)は夫婦毎に異なります。ということは、一律の治療で妊娠できる可能性が高い「軽症な不妊なのか」、妊娠が困難な「重症なのか」を明確にすることが最も重要になるということです。
一方で治療現場では、受精しないといけないので「とりあえず顕微授精をする」という傾向が見られます。しかし前述しているように、顕微授精は精子異常(DNA損傷をはじめとする機能異常)を克服できる技術ではありませんので、そこに主因がある不妊ご夫婦は顕微授精を反復しても成果には繋がりません。とくに治療反復不成功のご夫婦は、なるべく早い時点で精子の「質=機能」を正確に調べることができる分子生物学的な手法による「高精度精子検査」を受けてください。一般精液検査で検知できない精子異常を把握できることにより、治療の「見通し・リスク」のみならず、「どのような治療法が最適で安全か」という個別化プランを設計することが可能になり、成果に繋がる確率が上がります。ここに個別化治療のメリットがあり、反復不成功の重症なケースこそ、生かされます。