繰り返しになりますが「命を造り出す生殖補助医療」においては安全が全てに優先します。出生児の遺伝子の半分は精子が担うわけですから「どのような精子を穿刺するか」、つまり「精子品質管理」は出生児の健常性に直結します。
「命を造り出す生殖補助医療」において最も怖い点は、軽度〜中等度の異常精子、例えばDNAが傷ついた本来受精してはいけない精子を顕微授精によって人の手で受精させ、妊娠、出産に至った場合に、「生まれてくる子どもにどのような異常が起きるのか」が未知の領域であることです。
生殖補助医療は新しい医療です。日本初の体外受精児が誕生してまだ約40年。日本人の平均寿命である約84年以上の長期にわたり「安全である」ことはまだ確認できていないのです。
安全性や有効性について、科学的根拠に基づいたエビデンスが確立していない部分があるにも関わらず、「運動精子=良好精子」として卵子に穿刺するという現在の顕微授精の治療モデルには不備があると言わざるを得ません。
臨床精子学の視点から見たとき、「顕微授精はむしろ精子の状態が悪い方には不向きな治療法である」というのが私の結論です。