弁護士 妻より
私としては、まさに、子どもの安全を優先すべきという点について黒田先生のおっしゃる通りだと思いながら読みました。
とはいいながら、私も不妊治療を始めようとしたときには、やはり成功率(妊娠率)を知りたいと思いました。しかし、実際に当事者となって、黒田先生のところに通い始め、そういう問題ではないと思うようになりました。
私自身も、お客様に勝訴率はどれぐらいですか、などと言われると困ってしまいます。勝ち筋の事案だけを受けている弁護士は勝訴率は高いでしょうが、紛争の解決になっているかどうかはわかりませんし、依頼者の満足度が高いかどうかもわかりません。もちろん、結果も大事です。しかし、私は依頼者の方のその後の人生に少しでもよい結果となってほしいと紛争の解決のお手伝いをしており、そもそも勝訴率など把握もしていません。不妊治療についても、とても似た部分があると思います。それぞれの夫婦が抱える問題は千差万別であり、自分たち夫婦の場合にどのような問題があり、どのような治療がありうるのかというのは、他の夫婦の方の結果の確率で測れるものではないと思っています。
一方で、不妊治療における安全性の面については、十分に光が当てられていないと思います。安全面を強調することは、障害児の排除につながりかねない側面もあり、すごく難しい点かとも思いますが、医療技術には必ずリスクを伴います。また、そのリスクに関する説明を患者側は知る権利がありますし、医師側も説明する義務があります。
また、生まれてきた子ども達や不妊治療に対する偏見もまだまだあると思います。いまだに、「あそこの子は双子だって、不妊治療だったのかな」というような言い方を耳にします。そもそも不妊「治療」という言葉も好きではありません。いわゆる病気の治療のような「治療」ではないからです。自分たちだけでは生殖ができないという意味では「治療」なのかもしれないですが、根本的な原因を「治療」するわけではなく、生殖補助なのだと思っています。
社会として、女性のキャリアの問題などに目を向けるのではなく、なぜこんなに自然に子どもを授かることが難しくなってしまったのかという根本的な原因にもぜひ目を向けてもらいたいです。晩産化だけが問題ではありません。なぜ、これほど精子の質・量に問題がある男性が増えてしまったのかということを社会として真面目に考えなければ、百年後には大変なことになってしまうと思います。
直近の問題として、どのように生殖補助を行うかということが、子どもの安全や当事者の人生への選択、家族を形成する権利など様々な観点から検討される必要があると思っています。それと同時に、なぜこのような現象が生じているのかについても、問題意識を共有し、解決に向けた議論、検討がされるようになることを切に願っています。
取り急ぎ、記事を拝見し、私が不妊治療について思っていることを申し上げました。脈絡なくて申し訳ありません。黒田先生がお忙しい中、生まれてくる子どもの立場から発言してくださっていることをとても心強く思っております。
研究者 妻より
私が実際に不妊治療を体験して感じた、現場の問題点を以下に挙げてみます。
黒田先生がいつも話される、「不妊治療で生まれてくる子どもの安全性が十分に説明されていないことです」
不妊治療を始めた頃は、とにかく「妊娠すること」が第一の目標で、臨床例が多く妊娠率の高い有名な産婦人科病院へ通いました。夫は乏精子症でしたが、そこの院長先生は「精子は元気なのが1匹いればいい」という考え方で、顕微授精により胚盤胞を3つ移植しました。妊娠はしましたが、染色体異常で流産しました。流産してみて初めて、「生まれてくる子どもの安全性」について、ようやく少しずつですが考えるようになりました。ネットの情報で、胚盤胞移植の場合、複数個を移植するとお互いがくっつきあって、キメラ胎児になってしまう可能性もあることを知りました。その産婦人科病院では、そのような説明は一切ありませんでした。その産婦人科病院では、もう一度胚盤胞移植を受けましたが、その際には、産婦人科病院が複数個の胚盤胞を移植しようとしたのを断り、1個だけ移植してもらいました。やはり妊娠しましたが、前回同様に染色体異常で流産しました。
同じ失敗を繰り返したことと、産婦人科病院の説明不足に不信感を抱いたことで、転院することにしました。その頃、黒田先生の著書で「科学的評価によって精子を選別する」方法があることを知り、黒田先生のクリニックに通うことにしました。他にも、有名なクリニックに相談に行きましたが、どの院長先生もやはり「精子は元気なのが1匹いればいい」という考え方に失望し、黒田先生のクリニックを選びました。黒田先生のクリニックですぐに妊娠し、無事に元気な子どもを出産することができました。
不妊治療を受けようとする患者は、最初は治療についての知識がほとんどありません。どのクリニックも、治療スケジュールや妊娠率などは詳しく説明してくれるのですが、胎児の安全性については、ほとんど説明がありません。患者側も、「妊娠」が第一の目標になってしまうので、胎児の安全性までは気が回らないことが多いのです。不妊治療にはいろいろなステップ(とくに顕微授精の場合には、どのような精子を選ぶのか、受精卵をどこまで培養するのか、何個の受精胚を移植するかなど)があり、それぞれのステップでどのようなリスクが伴うのか、黒田先生のように科学的根拠に基づいたきちんとした説明をするべきだと思います。しかし、多くのクリニックでは、患者に対して十分な科学的説明がされておらず、危険な治療が日々行われています。
理系会社員 夫 より
先生の記事を拝見しまして、思ったこと感じたことを書いてみました。
(1) 患者の立場から不妊治療の知識取得について
黒田先生にお世話になってかなり正確な知識の習得ができたと感じでいます。現在の状態と、不妊治療に取り組み始めて間もないころと比較すると相当な知識の差、そして知識に基づく考え方の差は大きいです。不妊治療に取り組むには十分な知識を得ることの重要性をとても感じます。しかし、不妊治療に取り組もうと思った人が正確かつ十分な知識を手に入れる機会は残念ながらかなり少ないと思います。
ほとんどの人が、インターネットからの情報収集や、宣伝している有名な不妊治療の病院にまず行ってみる、といったところではないでしょうか。どこでも、そこでの治療技術・設備やスケジュールの説明と、実績・妊娠率といった内容でした。全くといっていいほど説明がなかったのが、不妊治療に伴うリスクについてでした。
(2) 不妊治療におけるリスクについて
一般的な不妊治療の病院では、リスクが十分に語られていません。私たちも、黒田先生にお世話になるまでは、どこに行っても不妊治療は安全ですと語られ、リスクに関する正確な知識を持っていませんでした。
でもよくよく考えると、一般的な健康診断の時でさえ、例えば胃カメラの検査を受ける時でも、鼻からと喉からではそのようなリスクの違いがあります・・・と必ず説明を受けます。内科、外科、歯科でも小さな疾患でも治療におけるリスク説明が必ずされています。
不妊治療の病院では、とくに宣伝されている有名なところでは、多くの患者が来ている様子を目の当たりにしているので、聞くまでもなく大丈夫だろうと思いこんでしまうのです。私たち夫婦もそうでした。病院を移ってもどこも同じような治療を行っていますし、どこでもリスクの説明も不十分なので、どこでもこんな感じかなと思いこんでしまうのです。このようになってしまうと、不妊治療のリスクを含めた十分な知識がさらに必要だと感じることもなく、いつまでも同じ治療を疑いもなく続けることに陥ってしまいます。そこから脱出するすべはなかなか見当たりません。
(3) 黒田先生と出会えて
黒田先生と出会えて、先生と一緒に不妊治療を頑張れたからこそ、思ったことがあります。不妊治療を行わない人にはわからない苦悩が多くありますが、自分や妻、家族をみつめる良い機会になり、人生のプラスになっというたことです。人生において子どもがいることはかけがいのないもの、でも一方では子供を授かることが最高とは限らない、このように感じられるのは、黒田先生と後悔のない人生の一ページを共有できたからです。
文系会社員 妻 より
先生の記事を拝見しまして、思ったこと感じたことを書いてみました。
大手クリニックに数年通院しました。何の説明もなく、いきなり「顕微授精をしておきますから」から始まった不妊治療でした。顕微授精の回数が重なるにつれ、毎回同じことの繰り返しに疑問を抱き始めました。この間、「顕微授精で必ずしも健常な子どもを授かれるとは限らない」ということは全く知りませんでしたし、全く説明もありませんでした。
黒田先生の日経DUALの記事にもありましたが、「不本意な治療でした」が、本人たちは全く気付いていませんでした。
その後、たまたま新聞記事で黒田先生のことを知り、カウンセリングを受け、ここならば私たちに合った治療を受けられると転院を決意しました。転院後、前クリニックとのあまりの違いに愕然としました。患者ごとにきめ細やかな治療が考えられ、また残念な結果になった場合、次には違うやり方になるなど、ベルトコンベア式の前クリニックにはあり得ないことだらけでした。
私たちは黒田先生とご縁があったお陰で、結果として安心・安全な不妊治療を受けられましたが、黒田先生のように不妊治療で生まれてくる子どものことまで考えてくださる先生はほとんどいらっしゃらないと思います。顕微授精の安全性についてですが、海外ではそのリスクが周知されているようですが、日本では黒田先生しか顕微授精のリスクと精子選別の重要性について語っていません。
私たち患者側は、不妊専門の看板を掲げている病院である以上は安全なものと錯覚してしまいます。でも自然に妊娠しても障害のある子どもは生まれてくるのですから、不妊治療ではそのリスクはもっと高いと考えるのは当たり前なのですね。