なぜ、黒田IMRの不妊治療は保険適用外なのか?

全額自費診療なのか?その理由と黒田院長の想い 全額自費診療なのか?その理由と黒田院長の想い

2022年4月、不妊治療への保険適用が始まったことにより、以前より少ない自己負担額で治療を受けられるようになりました。一方で、黒田インターナショナルメディカルリプロダクション(以下、黒田IMR)は、現在も一貫して全額自費診療を行っています。そこには「安全性及び有効性の高い不妊治療戦略を実現するため」という明確なポリシーが存在しています。

さっそくですが、黒田IMRの「精子が先」の独自の治療戦略について教えてください。

黒田院長:黒田IMRでは治療を開始する前に、「分子生物学的手法による精子精密検査」を行います。この精子精密検査は長年「ヒト精子の研究」を行ってきた私たち精子研究チームが開発したもので、普通の顕微鏡で精子数や運動率、大まかな精子形態などを観察する「一般的な精液検査」とは異なり、精子のDNA損傷をはじめとした受精に関わる重要な機能の異常が無いかを正確に見極める検査です。

黒田IMRの「精子が先」の独自の治療戦略について 黒田IMRの「精子が先」の独自の治療戦略について

この精密検査によって、精子の科学的根拠に基づいた詳細情報(EBM:Evidence-Based Medicine)を取得することで、その精子が生殖補助医療の適応基準を満たしているのか、わかりやすく言えば顕微授精に向いているタイプの精子なのか否かを見極めて、安全な不妊治療を行うことができるかを明らかにします。 精子精密検査の結果、安全な不妊治療が可能と判明してから、夫婦ごとの適切な治療方法を選択します。

このように精子の状態を含む夫婦ごとの個別の条件を明確にし、治療の安全性と有効性の向上を図るというのが当院の基本の治療戦略です。

この治療戦略を実現するために、初診のカウンセリングから精子精密検査他全ての検査、排卵誘発や採卵、卵子・精子の取り扱い、受精、胚培養、胚移植、母胎管理に至るまで、院長の私自らが不妊治療の全工程を一人で担当しています。

黒田院長:私一人で不妊治療の全工程を担当することは極めて非効率ですが、あえて実践することにより、私の30年以上にわたる「研究者としての基礎的知見」と「医師としての臨床経験」の両方の視点から、夫婦ごとの病態と背景を含めた不妊の全体像を統合的に把握することができます。その結果、画一化された従来の治療モデルでは不可能な、各個人、もっと言えば各細胞に適切な細やかな管理を実現することができるのです。
また「命を造り出す生殖補助医療」では、何よりも安全が優先されなくてはなりません。胚培養士と分業せずに私一人で全工程を行うと技術レベルにブレが出ませんので、安定して高精度な技術を提供できるというメリットもあります。 つまり、院長である私自らが不妊治療の全工程を一人で担当することの真価は、高い安全性を確保した上で、夫婦ごとに適切な完全オーダーメイドの不妊治療を実現可能にすることにあるのです。

「不妊」は夫婦が持つ複数の原因が絡み合った「結果」です。不妊になる背景は夫婦ごとに多種多様なため、不妊症を一括りにすることはできません。

治療法もリスクも妊娠率も夫婦ごとに異なるため、一律に同じ治療を行っても効率が良くありません。夫婦ごとの病態のみならず背景も含めて詳細に不妊を分析し、夫婦ごとに安全かつ適切な個別治療プランを作成することが不可欠なのです。

ここまでご説明してきた黒田IMRが目指す「安全性及び有効性の高い不妊治療戦略」を実現するには、画一的な診療内容に基づく保険診療枠内での対応は到底不可能であり、全額自費診療を貫かざるを得ません。

また「究極の個別プランに基づいた完全オーダーメイド不妊治療」となりますと、夫婦ごとの治療内容によって治療費に幅が出てきますので、一律の価格設定にすることもできないのです。

精子精密検査の結果、安全な不妊治療を行えないケースもあると思います。その事実を受け止め難い、不妊治療を諦められないという夫婦もいらっしゃるのではないでしょうか?

黒田院長:精子精密検査により重度の精子異常が明らかになり、精子側から安全な不妊治療を行うことができないという結果になる場合もあります。

その場合、不妊治療未経験の夫婦が無治療のまま「撤退(治療断念)」を選択しなければならないケースや、逆にこれまで長い間不妊治療を続けてきた夫婦に「治療打ち切り」のお話しをしなくてはならないケースも出てきます。

思ってもいなかった事実を伝えられた夫婦は例外なく混乱し、そこから生まれる葛藤、絶望は計り知れません。不本意な不妊治療終了に対して夫婦が共に納得してその後の人生に歩み出すには、EBMに基づいたサイエンスの観点だけではなく、夫婦それぞれの心の問題に寄り添った「メンタルカウンセリング」が必要です。

当院は保険適用外だからこそ、不妊治療終了の際のメンタルケアまで行うことができるのです。

全額自費診療だからこそ、不妊治療終了の際のメンタルケアまで行うことができる 全額自費診療だからこそ、不妊治療終了の際のメンタルケアまで行うことができる
黒田院長:これまで「不妊」は女性の問題として扱われてきましたが、実際は不妊原因は男女半々欠であり、不妊原因の半分を占める男性不妊の約90%には何らかの精子異常があります。
現在の不妊治療の現場では、顕微授精は男性不妊治療の最終手段とされており、生殖補助医療における授精法の約8割を占めるまでに至っています。

「運動精子が1匹でもいれば妊娠できる」「顕微授精で人工的に受精させられるから精子の問題は解決した」というイメージが定着しているため、「精子の数が少ない」「精子の運動が乏しい」といったような「精子の状態が悪い」場合、精子のEBM無しに、普通の顕微鏡で見て「頭部が楕円で元気に泳いでいる精子は正常な精子」、すなわち「運動精子=良好精子」と考えて、一律に「即、顕微授精」が展開されています。

しかし、私が30年以上「ヒト精子」の研究を進めていく過程で、「元気よく泳ぐ良好精子に、DNA損傷や卵子との接着に関わる先体の障害といった普通の顕微鏡では見えない異常が隠れている」という想定外の真実が明らかになっています。
私はこのような異常を「隠れ精子異常」と呼んでいます。顕微授精が何度も不成功に終わってしまう方の精子を詳しく調べると、さまざまなタイプの隠れ精子異常が高頻度で見つかりました。しかも精子異常の背景には、「新生突然変異(デノボミューテーション)」という遺伝子異常が関与している可能性が高いという事実も明らかになりました。
男性不妊治療において顕微授精以上の方法はないため、不成功の場合は顕微授精を繰り返すしかなく、現場には顕微授精反復不成功例が積み上がっています。

現在の一般的な男性不妊の治療方針では、隠れ精子異常の夫婦は顕微授精が不成功になる理由が精子にあるとは気付けず、ひたすら採卵を繰り返していればいつかは妊娠できると期待して治療を続け、反復不成功に陥ってしまうのです。その結果、反復しているうちに妻の加齢による卵子の老化も加わり、二重苦になってしまいます。

現在不妊治療として一般的に行われている顕微授精自体に問題があるということですか?

黒田院長:顕微授精はあくまで精子の数を補足する技術であり、精子異常を治すことはできませんので、「顕微授精は万能ではない」というのが真実です。

また医療介入には必ずリスクが伴い、顕微授精も例外ではありません。

繰り返しになりますが「命を造り出す生殖補助医療」においては安全が全てに優先します。出生児の遺伝子の半分は精子が担うわけですから「どのような精子を穿刺するか」、つまり「精子品質管理」は出生児の健常性に直結します。

「命を造り出す生殖補助医療」において最も怖い点は、軽度〜中等度の異常精子、例えばDNAが傷ついた本来受精してはいけない精子を顕微授精によって人の手で受精させ、妊娠、出産に至った場合に、「生まれてくる子どもにどのような異常が起きるのか」が未知の領域であることです。

生殖補助医療は新しい医療です。日本初の体外受精児が誕生してまだ約40年。日本人の平均寿命である約84年以上の長期にわたり「安全である」ことはまだ確認できていないのです。

安全性や有効性について、科学的根拠に基づいたエビデンスが確立していない部分があるにも関わらず、「運動精子=良好精子」として卵子に穿刺するという現在の顕微授精の治療モデルには不備があると言わざるを得ません。

臨床精子学の視点から見たとき、「顕微授精はむしろ精子の状態が悪い方には不向きな治療法である」というのが私の結論です。

全額自費診療だからこそ、不妊治療終了の際のメンタルケアまで行うことができる 全額自費診療だからこそ、不妊治療終了の際のメンタルケアまで行うことができる
黒田院長:欧米では10年以上前から「顕微授精で生まれてくる子どもに発達障害を含む先天異常が多い」という報告が多数あり、アメリカ疾病対策予防センターCDCは、2015年に『American Journal of Public Health』に掲載されたコロンビア大学教授ピーター・ベアマンらの大規模疫学調査データに基づき、「先天異常と顕微授精との間に因果関係がないとは言い切れない」という見解を出しています。
一方日本では、2011年に厚生労働省の不妊治療出生児に関する調査において、顕微授精・胚盤胞培養・胚盤胞凍結保存の人工操作を加えるほど出生時体重が増加することが報告されています。
この胎児過剰発育には遺伝子の働きを調整する仕組みに異常が出る「ゲノムインプリンティング異常」が関与している可能性が指摘されており、先天異常を専門とする小児科医や研究者らは「顕微授精や胚盤胞培養のリスク」を危惧する研究成果を報告しています。
しかしながら、顕微授精への危機管理意識が定着している欧米に対して、日本では未だに「顕微授精は安全で、自然に妊娠した時と同じ位のリスクです」と説明される傾向にあり、出生児の精神発達障害を含めた心身発育状況が表面化してくることはほとんどありません。

現時点では、DNA損傷などの精子異常と顕微授精、先天異常の因果関係が明確に証明されたわけではありませんが、明らかになっていないからこそ「命を造り出す生殖補助医療である不妊治療では、疑わしきは避けるべきである」という考えが、ヒト精子を研究してきた私の臨床基盤にあります。

日本の不妊治療はどのように変わっていくべきだと思いますか?

黒田院長:精子のEBM無しに、「運動精子=良好精子」「即、顕微授精」「ひたすら採卵を繰り返していればいつかは妊娠できる」と考えて採卵を繰り返す「卵子が先」の画一化した治療モデルから、あらかじめ精子の「DNAや先体などを含めた質の保証」「量の確保」を行ってから採卵が可能か、もしくは治療の撤退か、治療の終了かを判断する「精子が先」の新しい治療モデルへの転換を提唱したいと思います。

あらかじめ精子の「DNAや先体などを含めた質の保証」「量の確保」を行ってから採卵が可能か、もしくは治療の撤退か、治療の終了かを判断する「精子が先」の新しい治療モデルへの転換を提唱したいと思います。 あらかじめ精子の「DNAや先体などを含めた質の保証」「量の確保」を行ってから採卵が可能か、もしくは治療の撤退か、治療の終了かを判断する「精子が先」の新しい治療モデルへの転換を提唱したいと思います。

この転換により不妊治療の限界も視野に入れたプランの構築が可能になり、反復不成功に陥ることを回避し、成功への近道へ安全に導く技術努力を可能にします。

また採精と異なり、採卵は外科的処置が必要でリスクもあり、費用も高額であることを考えると、夫婦の人生における時間と労力と費用の節約につながることもメリットと言えるでしょう。さらに顕微授精反復不成功に陥って悩んでいる夫婦にとっては、「治療の止め時」を考える出口戦略として重要です。

「運動精子=良好精子」「即、顕微授精」という現行の固定概念から脱却し、精子品質管理に特化した安全性及び有効性の高い不妊治療へと転換していくためには、EBMの観点から「精度の高い臨床統計」に基づいて、「顕微授精の安全性」と「顕微授精の有効性」、すなわち「顕微授精の技術限界」を明確にすることが不可欠です。

不妊治療は既に確立した医療のようなイメージで捉えられていますが、実は、誕生する命の安全保証や有効性という視点から見ると、未だ発展途上にあるものだということを、不妊治療の保険適用を機に改めて認識していただきたいです。

また日本の生殖補助医療の治療件数は世界一と言われていますが、その一方で出生率が世界最下位という事実もあります。(※1)さらに日本は生殖補助医療に関する法整備が行われていない数少ない国の一つでもありますので、不妊治療に関する法整備も含めてガイドラインが確立されることが急務です。

※1 出典:東洋経済ONLINE「成功率低すぎ!日本の不妊治療の残念な実態」https://toyokeizai.net/articles/-/168431(2022-05-31)

黒田院長:不妊に悩む夫婦に「ヒト精子に関する正確な情報」が一刻も早く浸透し、また医療従事者には「ヒト精子に関する正確な知識」のみならず「精子に対する高度な技術」が広まり、「隠れ精子異常」の問題が見逃されたまま顕微授精反復不成功に陥らないことを、「運動精子=良好精子」「即、顕微授精」の治療モデルから一日も早く脱却することを心より祈っています。

ここまでお話ししてきたように、精子の問題の背景には遺伝子異常が関与していますので、精子異常と加齢の関係性は極めて低いです。臨床精子学を専攻している立場から率直に申し上げると、重度の精子異常に対する有効な治療法は将来的にも登場しないと思います。
一方で、卵子の問題は加齢に直結する場合がほとんどですので、女性が若いうちに妊活できるような社会の仕組みが構築されることも期待したいです。
全ての夫婦が安全な不妊治療を行えるわけではありませんし、また皆が皆、妊娠できるわけではありません。この現実をしっかりと認識した上で、不妊に悩んでいる全ての夫婦が「安全で適切な不妊治療」に出会えることを切望しています。
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