一般的に「不妊である」となりますと、その原因は女性側にあると思われがちですが、不妊の約半数は男性側に原因がある「男性不妊」です。しかも男性不妊の約90%は精子に問題がある「精子異常」になります。精子異常は治療により改善を期待できるケースもありますが、むしろその比率は低く、大半の精子異常は『新生突然変異』de novo mutationという遺伝子の問題が関与する「遺伝子異常」、すなわち「先天異常」になります。しかも精子の中に隠れた異常(これを『隠れ精子異常』という)として発現しているケースが殆どですので、普通の位相差顕微鏡で見ただけでは検知できません。特に不妊男性の精子には、遺伝子異常が関わる隠れ異常が認められる傾向にありますが、隠れ精子異常が見逃されたまま間違った治療が進められている場合も少なくありません。ここに男性不妊治療が難航する原因があります。しかし、この点が現状の男性不妊治療の現場において直視されていない点に大きな問題があります。